東京漢点字羽化の会学習会報告

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「うか」062
 第1回「学習会」2007年4月21日(土)18:30〜20:30(木村 多恵子)
 お約束の受講者の皆様は無事参集し、さらに見学者がお二人もきてくださり、会員の皆様もほどよい人数の方が出席してくださった。
 いつもの自己紹介と、これまでの漢点字との関わりはどうであったかを簡単に話していただいた。
 受講者には、点字と墨字の「漢点字テキスト」を、羽化の会員とガイドヘルパーの方には墨字のテキストをお配りした。
 岡田さんが、漢字と漢点字との成り立ちを大筋で話し、漢点字交じりの文章は、「マス開け」をどうするかなどの面倒は要らないが、少し記号類に慣れていただくこと、助詞の「は」「へ」の使い方、カタカナ記号などを説明した。そして、漢数字の一〜九、〇、十、廿、百、千、万、兆、の16文字を説明した。
 「学習会」の記録を取ってくださるよう、羽化の会員にお願いした。快く引き受けてくださり、頼もしい。
 「羽化61号」が出来上がり、わたしの手元に届いたので、少しでも早く、と本日ご参加くださった羽化の会員にはお配りした。後は5月の例会のときにお渡しする。
 受講者には、既に岡田さんが、「テープ版羽化」の60号から、聞いていただくよう、「横浜漢点字羽化の会」の係の方に頼んでくださり、「聞かせていただきました」との報告があった。

 第2回「学習会」2007年5月19日(土)
 お一人が急病で欠席されたが、羽化の会員も、受講者も少し和んできたように思える。質問も出たし、この漢字はどんなときに使うかなど、活発な声も出た。
 レーズライターの登場。会員さんたちが、岡田さんから、指定された文字を書く段になって、それぞれ、ケイタイ電話の辞書機能を使って、確認し、如何に間違えずに書くか、と誠実に対処なさること、また、即座にケイタイが出る若い機転もほほえましく感じた。
 もちろん、白川静先生の「常用字解」を持参していられる方もおり、文字の細かい意味や変化なども読み上げてくださる。この硬軟合わせての学習会は楽しい。
 たとえば、レーズライターで、「兆」と「元」を書いていただく。「兆、の文字には、2本、縦にある線が途中から曲がっているでしょう。これを〈ひとあし〉といいます。まるで一歩踏み出しているようでしょう。この縦の曲がった線が、元の中にも、長さが違う横線2本の下にもあるでしょう、漢点字では、〈元〉は〈兆〉の近似文字としています。」
 岡田さんはもっと的確に説明しているが、わたしが書くと、かえって混乱させてしまうので、こんなところで、学習内容には触れないことにする。

  レーズライターで書いた文字
 廿、革、漢、千、万、一、亜、亞、三、参、九、丸、兆、元、億、意、目、見、目の形、

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 第3回「学習会」2007年6月16日(土)
 アイメイトと同伴でご参加予定の方は、あいにく、当日健康状態が優れないとのことで、今回は欠席させて欲しいと連絡があった。ただ、来月(7月)には出席されると言っておられた。
 まず、自己紹介をし、前2回の復習から始めた。
 貝の文字についての話をしているとき、岡田さんが、「蜆(しじみ)や蛤(はまぐり)、栄螺(さざえ)など、貝類には、この貝の字は使わないで、虫偏を使います。昔は、生き物は、人と獣と鳥と花と虫だけだと考えていて、蛙や蛇も、クラゲも、甲殻類も、皆虫にしていました」と言った。確かに平安時代のものを読むと蛙を虫だと書いているのを見たし、国文学の先生もそんな説明をしていた。
 では、この貝の文字はどう使うか。それは、貨幣、財産に関する言葉に使われる。子安貝が、宝貝(たからがい)の総称であるところから、財産と考えたのだろうか?子安貝は「竹取物語」の中では貴重品扱いになっている。また、アコヤ貝は真珠貝とも言われ、貝の中で、真珠の核が作られ、美しい真珠が取れることから、これも宝だと考えたのであろう。確か、これらの貝はそのままでは、桜貝のようには、あまり見た目に美しいものではないように聞いた覚えがある。しかし、いろいろな貝を磨いて、調度品の装飾に螺鈿という技法で、青貝や白蝶貝などを使っていることからも考え合わせ、貨幣価値と見たことも考えられる。何れにしろ、これも中国から伝わったことなので、わたしなどに分かるわけがない。(木村の脱線)

 レーズライターで書かれた文字
  糸、系、比、数、家、宿、学、言、語、頁、貝

 漢字を構成するパーツとして、、ウ冠、ワ冠、ツ プラス ワ冠、ノ・ツ プラス ワ冠などがあること、そして、実際にこれらも書いていただいて説明した。
 6月の例会のとき、会員から、レーズライターで書く文字を予め岡田さんに決めていただいて、皆で書いておき、「学習会」の場で文字を書いている時間を省いてはどうか、との意見が出されたが、今回はその場で書いていただいた。羽化の会員の方々が書いてくださっている間の、岡田さんの話もおもしろいので、木村としては、この時間も捨てがたい気がするが、いろいろ試みるのはよいと思う。

 第4回「学習会」2007年7月21日(土)
 前回来られなかったアイメイト同伴者を含めて、お二人の新しい受講者が加わり、改めてこれまでの学習内容の総復習をした。大急ぎで前3回分を行ったので、岡田さんも大変だが、新しい方々はもっと大変。そして4回とも完全出席の方々には少しもうしわけない気はしたが、さすがに、岡田さんの話の要点は何時もはずさず、枝葉を広げて説明をした。
 皆さんは、いわゆる途中失明で、漢字の大まかはご存じなので、岡田さんの話しも充分ご理解いただけたと思う。

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 第5回「学習会」2007年8月18日(土)
 8月の「学習会」に、どうしても出席できないので、何とか、会の模様を録音して欲しいとのご希望があり、検討の結果、「学習会」をスムーズに進めるために、プレクストークを使ってメモリーカードに録音した。録音後のデータ管理は、やはり岡田さんが行なってくださる。
 以前に、会員から、録音をした方が良いのではないか、という提案があったが、質問その他気軽に話がし辛いのではないか、ということで、実行しなかった。現に、今回その経緯を説明し、同意を得ようとしたところ、室内はシンとして声が出なかった。けれども、岡田さんの話が始まると、だんだんあちこちから声が出るようになった。そんな自然体が一番よいように思う。
 今後、このデータをCD、あるいはメモリーカードで欲しいと言われる方が現れるかもしれない。どちらにしても、岡田さんに面倒を見ていただかなければならない。
 学習内容は、前回のおおざっぱな復習をし、レーズライターで書かれた文字を見ながら、文字の元の意味を、岡田さんが説明し、その文字を使う熟語をみんなで探した。たとえば、「子」の使い道が多く、子供、様子、甲子園(こうしえん)、甲子(きのえね)、子午線(しごせん)などである。また、文字そのものの元の形、たとえば木の元の形を、会員に書いてもらったりした。そして、「元」と「本」の使い分けなどについても、岡田さんが解説した。
 レーズライターで書かれた文字:金、木、草、犬、子
 金は、金偏。木は、木偏。草は、草冠。犬は、獣偏として、漢点字も使われること。
 木の近似文字として、未、末、本があることを、見本の漢字を見ながら、特に、未と、末がよく似ていること、どちらも「木」の横棒の下に、もう一本横棒が入るが、その横棒は、「未」のほうが「末」より長いこと、つまり、「未」の方は、上の横棒より下の横棒の方が長いこと、「末」は上の横棒より下の横棒が短いので、上と下の棒の長さを比べることによって、「未」と「末」を区別することをみんなで確認した。
 木の字は、真っ直ぐ下に伸びた線と、その左右の斜めの線は、木の根を表し、横棒は、木の枝を示すのだという。そんな説明の後に、木の元の字の形を書いてもらった。木村は大樹が台地に根を張り、枝を広げている感じがした。

 第6回「学習会」2007年9月22日(土)
 自己紹介と、前回「学習会」の復習は原則通り行なった。

 新しい文字
  都、(こざと・おおざと)、市、発、(発頭)、  食、(食偏)、馬、(馬偏)、田、竹。
 田の近似文字として、由、曲。

 こざとと、おおざとは文字の形は同じで、左(偏)にあると「こざと」、右(旁)にあると「おおざと」という。文字の形は同じだが、元の形と意味は異なるという。こざとの元の字は、」阜`ふ」で、山を表し、神が梯子を伝って下りてくることを表すらしい。おおざとの元の字は、「邑`ゆう」(巴の上に口がある)で、人が集まる所だという。
 「都」野も字を説明したとき、「京」の文字もレーズライターで書いて頂いた。この文字にも「みやこ」の意味がある。従って、「京都」とは正にみやこである。
 「食」は、「三角屋根の下に良」。
 「馬」はたてがみをなびかせて走っている形。
 「田」の話のとき、岡田さんは、「自然界には直線はない。田圃の田は確かに人が作り出したものだから、文字も直線で構成されている」と言った。
 「竹」のところでは竹細工など、何があるか皆で探した。

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 第7回「学習会」2007年10月20日(土)
 新しい文字は、
  土、手、戸、人、仁、水、氷、土偏、手偏、ニスイ、人偏、氷の近似文字の永

 人と仁の違い、使い分けの説明をしたとき、岡田さんが「仁、義、礼、智、信の仁です。」と言った。みんな「南総里見八犬伝」のことは解っているのだが、その他に加えられている「忠」と「孝」は思い出せたが、後の一つが思い浮かばない。家に帰って、資料に当たってみると、上の五つは、1265年成立の『五(ご)常内義抄(じようないぎしよう)』と言う、わたしには難しい教訓書の序文にある、「夫(それ)五常は仁、義、礼、智、信、これ也。仁は慈(慈愛の慈)、義は和(平和の和)、礼は順(順番の順)、智は賢(賢い)、信は真(真実の真)也。人の人たるは、この五常を振る舞へり。人の人たらざるは、五常に常に背むけり。」とあった。
 『南総里見八犬伝』は、むろん滝沢馬琴作のもので、上の五文字に、忠(忠義の忠)、孝(親孝行の孝)、悌(てい)(なかむつまじい)の三文字を加えて、それぞれが、この文字の印のある玉を持って、お家再興を謀る物語である。脱線ついでにわたしの体験を一つ。
 以前、わたしはある点字図書館で、「点写」の仕事をさせていただいていたことがあり、その仕事の中で、この「南総里見八犬伝」を行ったことがある。残念ながらこの「仁、義、礼、智、信、忠、孝、悌」もカナ文字で、わたしは図書館に、この八つの文字に該当する漢字を問い合わせた覚えがある。個人的には興に乗れないものであったが、もしこれが漢点字であったら、もう少しおもしろかったかもしれない。

 第8回「学習会」2007年11月17日(土)
 前回の復習の中で、水の文字の形は、「水の流れる形を象った」と説明されたが、レーズライターで書いていただいたのを見ながら、視覚的に観察すると、水が流れる様子はこんな風に見えるのかと、木村は実際の水の流れを見ていないので、そうか、と納得するしかないが、漢点字では「水」と書くと、最初に覚えたとき、この形の方が「水」だという感じが素直に伝わって来た覚えがある。「氷」は、「水が冷えて固まったもの」で、「氷」を象ったものだと説明され、これも文字を見ながら「そんなものか」と思った。しかし、これも漢点字で習ったときを思い出すと、やはり点字の、1・2・3の点の形がそのまま右側にずれた点字の配列が、ストンと「氷」だと覚え込めたのは何故だろう。
 新しい文字、
  力、示、示偏、私、禾偏(ノ木偏)、走、走にょう、進、進にょう、火、列火、女(女偏)

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