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        『字解』音訳プロジェクト、ご参加のお願い
 以下は、『常用字解』、『人名字解』の音訳を、全国の音訳者の皆様に呼びかける趣意書です。多くの皆様のお手を挙げて下さることを念願しております。なお初回の会合を、6/29(水)、14:00〜、墨田区立寺島図書館で予定しております。


           『字解』音訳プロジェクト、ご参加のお願い

                      『字解』音訳プロジェクトチーム発起人会
                      山内薫、岡田健嗣、田中秀臣、木村多恵子
音訳者各位
 日頃の視覚障害者の読書環境の改善への皆様のご尽力に、心より感謝申し上げます。
 私どもはこの度、横浜漢点字羽化の会による『常用字解』、『人名字解』(白川静著、平凡社)の漢点字訳の完成を機に、視覚障害者の漢字へのアプローチの幅をより広げられないかと、同書の音訳を試みたいと考えました。つきましては皆様のお力添えを賜り、このプロジェクトにご参加いただきたくお願い申し上げます。
 この二冊を選びました理由は、白川漢字学の集大成である『字統』、『字訓』、『字通』の三部作を、より一般向けにコンパクトにまとめ、平明な文章で理解し易いため、視覚障害者も白川漢字学の門戸に歩を進めることができるであろうと考えたからです。この二冊は、体裁は漢和辞典ですが、その内容は極めて読み物に近いものです。作家の宮城谷昌光氏の言葉を借りれば、「漢字は歴史の窓」です。漢字の世界を楽しみながら歴史を遠望する、この二冊を読むことの楽しみはそこにあります。
 漢点字が世に問われて既に40年余りがたちましたが、その普及は遅々として進んでおりません。またその理解者も、残念ながらその当初に比べても、増えていない現状です。しかし、漢点字書は、ボランティアの手で着実に製作されています。横浜漢点字羽化の会では、15年近くにわたって、漢字の理解なしには読解困難な本、あるいは漢字そのものに関する本の漢点字訳に力を注いで参りました。
 その活動から分かったことは、漢点字は、漢字の要素を充分表現し得ているということです。言い換えれば、漢点字は漢字体系の触読文字であることを、事実として充分示し得ているということです。
 さらに、この活動から分かって来たことは、先天の視覚障害者と後天の視覚障害者の漢字受容の実態と、それに伴う様々な障害に関しての相違です。先天性の視覚障害者は、漢字の教育を受ける機会が閉ざされています。一般と異なり、初等・中等教育の課程で、漢字教育が行われていません。そのために、漢字の知識なしに、漢字仮名交じり文で表された文章を読むことを強いられます。
 一方中途失明者は、一般の教育課程で漢字を習得し、漢字仮名交じり文の読み書きを経験しています。しかし失明とともに、その能力を失い、読書から受ける経験も、極めて狭い範囲に制限されることになります。自らは漢字を知っていても、それを使えない情況に置かれ、その能力が徐々に減衰していくという危虞に見舞われておられます。
 後天の視覚障害の方が、それまで培ってきた読書の経験を、如何に今後に生かせるか、この二冊の本の音訳を通して、漢字に対する知識を閉ざさないことが、大変重要と考えています。
 現在、視覚障害者の読書は、音訳書に多くを依存しています。そこでこの二冊の漢点字訳の経験を音訳に生かして、まずは同書の音訳を目指したいと考えました。
 『常用字解』、『人名字解』は漢和辞典です。しかしその特徴の一つが、これまでの漢和辞典とは異なって、見出し字が音読の五十音順の配列になっていることです。
 音訳書のメディアは、現在デジタルのDAISYが主流となっています。視覚障害者にとってDAISYの特性は、速やかな検索機能にあります。DAISYの階層を利用して同書の五十音順の配列を検索すれば、何回かのキータッチで目的の漢字に行き着くことができます。
 また漢点字版を製作するに当たって、採用した大きな特徴は「字式」の採用です。「字式」とは、漢字の構成要素の配置を、「+、/、>」や括弧という数学記号を使って表すものです。例えば「村」であれば「木偏+寸」、「守」であれば「ウ冠/寸」、「国」であれば「囗(くに構え)>玉」と表します。このように漢字は、その構成要素とその配置が、その意味や読みと密接な関係にありますので、それを何とか理解できるようにしたいと案出されたものです。この「字式」のノウハウを音訳にも生かせれば、現在視覚障害者にとって困難とされる漢字の字形へのアプローチも、決して不可能ではないと考えます。
 このプロジェクトを開始するに当たって、二つのプロセスが想定できます。一つは、読み方の統一です。何回かの打ち合わせと検討を重ねることで、皆様の貴重なご経験を加味しながら、よい方法を築けるものと考えます。もう一つは編集です。ご承知の通り、五十音順の配列では、サ行の辺りに漢字が集中します。従って検索を容易にするDAISYの階層をどのように構築してゆくかが、案外面倒な作業になるかもしれません。これも皆様と共に試行錯誤を重ね、最もよいと思われる方法を見いだせるものと考えます。
 『常用字解』は『人名字解』の規模の、およそ2倍あります。まずは『常用字解』の完成を2年と考えていますが、これはあくまで現在の時点でのことです。具体的な目標は、具体的に作業を開始するときに立てたいと考えています。
 このような試みはこれまでになかったことです。趣旨をご理解いただいて、多数の皆様のご参加をいただければ、幸甚の至りでございます。


   『字解』音訳プロジェクトチーム 第1回 打合会

  日時 : 2011年6月29日(水曜日)午後2時〜4時
  場所 : 墨田区立寺島図書館3階視聴覚室
       東京都墨田区東向島3-34-4  電話:3611-4610

  皆さんふるってご参加下さるようお願い申し上げます。

  参加申し込み、問い合わせは下記のメールアドレス又は電話までお願いします。
  墨田区立あずま図書館 山内 薫 kitarow07@yahoo.co.jp
  岡田 健嗣 03-3613-3160 八木沢療院内


  「常用字解」と「人名字解」のデージーによる音訳を是非お願いいたします
 「横浜漢点字羽化の会」の皆様のご協力により、上記2冊を漢点字で読めるようにしていただけましたことは大変な喜びです。けれどもこの2冊を現実に全部触読で読みこなすには大変な時間と労力とを要します。したがって、この本の内容を全体として理解するために、どうしても音訳していただいたものを何度も聞かせていただきたいのです。まず、本の内容を十分に理解したいのです。
 どんな内容が書かれているかを知り、さらに改めて自分が知りたい文字の意味や内容を確認するためには検索できることが大切です。そのためにデイジー形式で作っていただけますれば辞書として活用が広まります。読み物であり、辞書として効果的に楽しませていただきたいのです。
 現実にこの2冊を音訳していただくには緻密な打ち合わせと根気が必要と思いますが、是非実行に移していただきたいのです。
 皆様のご苦労を知りつつもなお、音訳化をお願いしたいのです。どうぞよろしくお願いいたします。
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