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         毎日新聞 「憂 楽 帳」 から


 下記は、毎日新聞2月10日の夕刊「憂楽帳」の欄に、記者の有田浩子様がお書き下さいました記事です。
 大変ありがとうございました。

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 読みたい本は書店や図書館に行けばいつでも手にとれる。「横浜漢点字羽化の会」の岡田健嗣(たけし)さん(67)から会報が届くたびに、それが当たり前にはできないもどかしさが伝わってくる。

 岡田さんは全盲。漢点字は漢字を表す点字体系で、部首を1マス8点、最大3マスで一つの漢字を表す。盲学校では6点カナ点字しか教えておらず、大学卒業後、独学で学んだ。漢字の成り立ちや意味が深くわかるようになり、漢字とひらがなの交じる日本語の文章に近い形での触読(しょくどく)が可能になった。
 しかし漢点字の習得者は全国で1000人弱といわれ、読みたい本を手にするにはボランティアが頼みの綱だ。常用漢字の入門字典『常用字解』の漢点字訳には6年半費やした。万葉集の解説本など漢点字訳された10種計約220冊は習得者なら誰でも読めるよう横浜市立中央図書館に納められている。
 「本は生きる糧」と岡田さん。点字を知る視覚障害者にとって指は目だ。漢点字の触読によって広がる言葉の世界を同じ視覚障害者に伝え、もっと読める本が増えればと願う。
                                  【有田浩子】
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