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               編集後記
                                   木下 和久

「うか」71号(2008年12月)
 「ご案内」にありますように、漢点字版『常用字解』の前半・十巻のファイルが完成しました。打ち出しは既に完了しており、年明け早々には製本を終える予定ですが、この作業はすべて手間のかかる手作業で、数人の会員の皆さんにお集まりいただいて共同で行います。一枚一枚の点字用紙の端を一センチばかり折り曲げて、それをのり付けするわけです。
 一つ一つの工程はそれほど複雑なものではありませんが、慣れないとなかなかきれいに揃った本の形になりません。そして、皆さんに分担していただくのはここまで。最終的に表紙をつけ、ラベルを貼って仕上げるのは、万が一失敗すると最初からやり直しということになって大変なのと、それを恐れて誰もやろうといってくれる人がいないので、私の一人作業になってしまいます。
 こうして毎年何冊かの漢点字本を横浜市中央図書館に納入してきました。最初に挑戦した『漢字源』は、なんと全90巻、よくやったものだと、10年以上前の作業を懐かしく思い出します。それに比べたら10冊そこそこの作業は大したことはないと自分自身に言い聞かせながら、やろうとしているところです。

「うか」72号(2009年2月)
 今年度の図書館納入漢点字書の製作は、編集作業の関係で少々遅い時期となり、秋の予定が一月にずれ込みました。紙折り・のり付けの作業は一番手間のかかる工程で、会員の皆さんに私の自宅に集まっていただき、一斉に作業を行います。全くの手作業のため、なかなかきれいに仕上げることが難しいもので、皆さん苦労しています。更に、これに表紙付けを行うのは、少々の熟練を要することなので、なかなか手を出していただけなくて、結局、私が一人でやってしまうことになります。それも、均一な品質に仕上げるのは難しく、苦労の種となっています。それでも今年も何とか十冊を仕上げ、中央図書館に送り出して、ほっとしたところです。
 そのあとすぐに、恒例の羽化の会新年会で、桜木町のワシントンホテルのレストランに26名の方が集まりました。ここ数年間、このレストランがお気に入りでいつも使わせてもらっています。この日は快晴で、窓から見えるみなとみらい地区の景色がすばらしいものでした。岡さんがそれを今回の表紙絵とされました。岡さんは特殊なご病気で、両手の親指に痛みを感じ、絵を描くのも大変なご様子、これ以上病状が悪化しないよう、祈るのみです。

「うか」73号(2009年2月)
 「案内」ページにありますように、本誌「うか」の音訳版がテープからDAISY版に衣替えします。
 本誌の編集担当者も、初代の宗助悦子さんから平野桃子さん、宇田川幸子さんを経て、私、木下に受け継がれ、号数も72号を数えるまでになりました。その12年間、1度も落とすことなく、隔月発行を継続してきました。私自身も、前担当者のやむを得ない事情から引き受けて、既に満3年を経過しました。確かに、この仕事は手間がかかり、神経も使うものですが、コンピューターとそれを扱うソフトの飛躍的な進歩によって、かなり快適に作業を進めることができています。
 しかし、なんといってもこの機関誌が続いているのは、岡田代表の並々ならぬ熱意と実践力によるところが大きいものです。その他にも長期間継続して執筆してくださっている山内さん始め多くの方々のご協力に感謝せずにはいられません。毎号新しく表紙絵を描いてくださる岡稲子さんは、第21号から欠かさず掲載させていただいています。本当にありがとうございます。

「うか」74号(2009年4月)
 入梅の季節となりました。地球温暖化の影響でしょうか、この梅雨の季節も、年々不規則な形でやってきます。どうやら今年は、沖縄がその標的になりつつあるようで、いつまでも強い梅雨前線が沖縄に張り付いて大雨を降らせています。
 我々のボランティア仲間にも、体調をくずしたり、その他の事情で活動が続けられなくなったりという、困難な問題が出始めています。ずっと「漢文のページ」で、漢文の例文を提供してきましたが、その担当者がどうしても継続することができない状態となって、代わりの担当者が見つかるまで、しばらく「漢文」はお休みとさせていただきます。
 先日の岡田代表による善隣協会での講演会では、与えられた短い時間の中で、「漢点字」をどう伝えていくかと、岡田さんは苦慮されていましたが、非常に手際よくまとめられ、漢点字についての話を聞く始めての人たちにも十分情報が伝えられていたものと思います。
 ご多分に漏れず、横浜市も神奈川県も財政難で、小誌の発行に利用させていただいている神奈川県サポートセンターの印刷機も、無料部分が完全になくなって、すべて有料となりました。そのため、発行の費用もそれなりに増加しています。会の財政は、今すぐ危機的な状態になるというわけではありませんが、賛助会費等について、更に皆様のご協力をお願いしたいというのが、偽らぬ本音です。

「うか」75号(2009年6月)
 当会、特に岡田さんにとって大切な方が、2人も相次いで亡くなりました。岡田さんが、どんなにお力落としされているか、想像に難くありません。安田さんとは、初め岡田さんを介しての間接的な知り合いでしたが、NPO法人の立ち上げや「東京漢点字」の立ち上げの頃から直接お会いする機会も増えました。とにかく、実行力のある方で、岡田さんの活動を陰で支える実に頼もしい親友のようでした。
 本誌が一時安田さんのNPO、トータルヒューマンネット21と共同発行されていたとき、お忙しい中を毎回のように遠方から印刷・製本作業に参加下さって、大きな戦力となっていただきました。
 一方、高橋さんは、岡田さんの追悼文にありますように、横浜漢点字羽化の会の発足当時からのメンバーで、その当時からの古いお付き合いということになります。ただ、私としては担当した分野の違いで、彼女の仕事ぶりを肌で感じたのはずっと後になってからのことです。岡田さんの文により、私の知らない分野での彼女のすばらしい業績が認識され、あらためて当会における彼女の存在の大きさが理解されます。と同時に、その重要な人を失ったあとの当会の活動について、一抹の不安を覚えざるを得ません。
 どうぞ安らかにお眠り下さいと祈るばかりです。

「うか」76号(2009年8月)
 民主党の新政権が発足し、その「マニフェスト」が着々と実行されつつあります。筋としては正しいのでしょうが、八ッ場(やんば)ダムの強制的計画中止など、はたから見てもかなり非現実的な政策が強行されようとしています。一見大衆受けはするけれども、実際上は予算の裏付けのない各種のマニフェストの約束がそのまま実行されると、結果として日本経済の致命的な崩壊につながるのではないかと、恐ろしさが脳裏をかすめます。
 障害者関連法などの合理的な見直しがなされるのなら大賛成ですが、実際のところはどうなるのか、ただハラハラしながら見守って行くしか芸はなさそうです。
 点字プリンターの故障については、何とかそれを直してくれそうなメーカーが見つかり、早速送り出しました。無事故障が直ってくることを祈っています。

「うか」77号(2009年10月)
 今号は原稿の都合で、当欄のスペースが狭くなってしまいました。その一因は、羽化の会の活動を紹介する各種媒体での記事紹介が3つも重なったためですが、岡田さんのたゆまぬ漢点字普及への努力の成果がいくらかずつでも世間に認められた結果だと考えられ、嬉しいことです。
 2009年、平成21年も間もなく暮れようとしていますが、今年は、当会の大切なお2人、安田章さんと高橋幸子さんを失うという大きな不幸に見舞われました。お2人のご冥福をお祈り申し上げます。

「うか」78号(2009年12月)
 岡田さんの大作「漢点字の散歩」のドイツ語編が終わりを迎えました。ドイツ語について予備知識のない方にとってはちょっとわかりにくい内容だったかと思われますが、岡田さんがいわれるように、点字をパターンとして受け止め、それがどんな意味を持つのかを考えてみるのもいいかと思います。
 つまり、1ますか2ますで表された点字の略字は、それを形として認識した時に、頭の中ではそれに相当する一連のアルファベットが瞬時に思い浮かぶのでしょう。ヨーロッパ言語は、いわゆる表音文字で表され、1つ1つの文字は意味を持たないとされています。しかし、われわれが英語の文を読む時、目は1つ1つの単語の綴りをひとかたまりのパターンとして認識しています。5つも6つものアルファベットの文字のかたまりを、1つか2つの点字で表して、それがもとの文字のかたまりを表すものと認識されれば、触読で読む人にとって、とても能率的な方法だということが容易に想像されます。
 漢字や漢点字の成り立ちには、それぞれその意味の表すものの形や、読み方に由来する音や、それらの組み合わせなど、いろいろの場合があります。これは個々の漢字の成り立ちを深く考えるには非常に大きな意味を持ちますが、実際に文章として読み取る時は、個々の漢字や熟語のパターンからその意味を直接認識しています。そこに、ドイツ語の略字と日本語の漢点字の共通点が見られるのでしょう。

「うか」79号(2010年2月)

  一口メモ
 ウィンドウズ・ビスタに代わって、セブンが登場しました。操作が軽快であるとか、扱いやすいとか、評判は上々のようです。しかし、ずっと古くからのソフトをお使いの皆さんにとって、こういう新しいOSが誕生する度に今まで使っていたソフトがちゃんと動くかどうかが、心配の種になります。漢点字変換ソフトであるEIBRKWも、その動作確認をするまでは心配でしたが、ちゃんと動きました。これで一安心という所です。ということで、EIBRKWはウィンドウズに関してはどのバージョンでも使えますが、一部の方に愛用されているマックには残念ながら対応していません。したがって、新たに漢点字変換の作業にご興味をお持ちの方は、もしパソコンを購入される場合は、是非ウィンドウズ・パソコンをお使いいただくようお願いします。

  編集後記
 最近のパソコン用プリンターの性能向上と価格の下落には驚かされます。特に万能型という、プリンターの他にコピーやスキャナーの機能を備えたものは優れものです。そのコピー機としての性能は、十分に実用に耐えるもので、欲をいえば最初の1枚などちょっと時間がかかりいらいらさせられますが、続けて何枚もとる場合には結構速いものです。そして、ありがたいことは、カラーコピーがインク代の負担増のみでトータルとして非常に低コストで可能となることです。コンビニのコピー機をお使いになる機会が多い方には是非こういう便利機器を利用されることをお奨めします。
 ただ、上記の便利機器も、大部分がA4版用で、それより大きなサイズには対応していません。最近A3版対応の万能型プリンターを購入しましたが、どうも紙送り機構が今ひとつという感じで、しょっちゅう2枚同時に送ったり、印刷位置がずれたりという不具合を発生します。以前から使っているキヤノン製のプリンターはそういう点で非常に安定しており、老舗メーカーの実力が感じられます。

「うか」80号(2010年4月)
 図らずも漢点字協会の川上リツエさんのご推薦で、日盲社協から表彰を受けることになりました。その大会会場は福井だということで、わざわざそこまで出かけなくてもという気がしましたが、福井という土地が珍しいので、旅行がてら出かけてみようという気になったのです。三木市で漢点字ボランティアとして活動していらっしゃる加藤京子さんもおいでになり、一緒に受賞しました。他に知人もおらず、彼女と親しくお話をさせていただきました。やはり、あちらのほうでもボランティアの高齢化とかせっかく入ってもらっても長続きしない人が多いとか、同じような悩みを持っているようでした。
 本誌の表紙絵を担当している岡さんが関係されている「白根学園」という福祉施設が今年創立50周年を迎え、その記念行事として来る8月27〜29日の三日間、ダイアモンド地下街で知的障碍の人達が製作した物品の販売会を催す事になりました。その中で、岡さんが「うか」の為に描きためた絵に少し手を加えて絵葉書を製作して出品されるそうです。もし時間の都合がつけば、行ってご覧になったらいかがでしょうか。

「うか」81号(2010年8月)
 「案内」ページにありますように、いよいよ会員募集のための講習会が始まります。これは漢点字図書を作成するためのデータ入力ボランティアを養成するためのもので、横浜と東京の両地区で相次いで開催するものです。ほぼ5年に1度の開催となります。
 ボランティア募集の記事が大手の新聞に掲載されると、毎回沢山の方が応募されて嬉しい悲鳴を上げるものですが、実際の所手ほどきの講習を受けて、いざ必要なテキストファイル入力の段になると、分からないことが多くて戸惑われる方が多くいらっしゃるようで、折角講習を修了されてボランティア活動に参加されても、いつの間にか消えていってしまわれる方が大部分となってしまいます。
 原則、漢字かな交じりの文章をそのまま入力するというのが基本ですが、全角と半角文字の区別も曖昧で、長音・マイナス・ハイフンなど一見同じように見える記号が、実は全くの別物だということを理解するのさえ困難な方が大部分です。
 そういう困難を乗り越えて、ずっとボランティア活動を続けて下さる方が、少しでも多くおいでいただくといいなと、心から期待してお待ちしています。

「うか」82号(2010年10月)
 岡田さんの「報告」にあるように、漢点字ボランティアのための講習会が始まりました。皆さん、熱心にお聞きになっておられるようですが、実際のところ今までに耳にしたことのないような用語がいっぱい出てきて、だいぶ戸惑っておられるのではないでしょうか。今やコンピューターの性能はとてつもなく大きなものになっていますが、これを一般の方が扱うには複雑で難しい内部のメカニズムは見せないようにし、簡単に操作できる表面のみを表に現して間違いなくコンピューターを動かせるようにするという傾向がますます顕著になってきています。
 しかし、漢点字を打ち出すためのデータファイルを作り、実際に点字プリンターを動かすという作業は、若干特殊な分野を利用することになります。今では「外字」を自分で作ってそれを登録して使うなどということは一般的ではなくなってしまったようです。そういうものは専門家が作って皆さんに供給するという考えなのでしょう。数多くの「異体字」が、ウィンドウズの外字コードにすでに割り当てられていて、ユーザーの皆さんはそれと知らずにこれを利用することになっています。便利には違いありませんが、実は漢点字はそこまでは対応していないので、漢点字変換ができないという大きな問題も生じているのです。
 素人は外字の作成など考えるなといわんばかりに、それに必要な「外字エディター」は、ウィンドウズの「すべてのプログラム」からも消えてしまいました。長年これを愛用してきたわれわれとしては、不便であると同時にとても寂しい思いをしています。

「うか」83号(2010年12月)
 この間、(有)横浜トランスファ福祉サービス(以下トランスファ)の創業5周年記念パーティがJR関内駅前の居酒屋で開催され、それに羽化の会の2人の仲間と一緒に招待されました。集まったお仲間は、主としてガイドヘルパーの仕事をされておられる方たちです。その中に最近この仲間に入られた沢井さんという方が隣に座られました。彼は私がもといた会社におられたそうで、システム開発関係のお仕事をされていたそうですから、話が合います。
 トランスファが仕事を始めて間もない頃、個々のガイドヘルパーの活動実績を集計するシステムを、私がアクセスを使って開発しました。そのシステムの使い勝手を十分に改良する余裕がないままに、いろいろな事情でそのままにしてそこから離れてしまいました。
 その沢井さんがそれを更に改良されて、個々のガイドヘルパーが自分の携帯電話で活動データを送信すると、それが事務所のシステムに直接入力されるようにして下さいました。私の開発計画の中にもそういうことが入っていたのに、実現できなかったことがこうして実現し、以前作ったシステムが今でも十分に機能していることを知って、本当に嬉しくなりました。

「うか」84号(2011年2月)
 先日、岡田さんがとうとうウィンドウズ7(64ビット版)のパソコンを購入しました。いくらXPが使いやすいといっても、マイクロソフトがもう後の面倒は見ないといわれればそれまで。パソコンを利用するユーザーとしては、流行について行かなければならない運命にあります。われわれとしては、この新しいウィンドウズにEIBRKWなどのソフトが対応してくれるかどうかが最大の関心事となります。結果としては、幸いなことにわれわれが使っている各種のソフトがそのまま正常に動いてくれました。更に嬉しいことは、視覚障害者にとって最大の問題である音声ソフトが同時に動いてくれなければならないことですが、新しく導入したPCトーカーは、そのままEIBRKWに有効に働いてくれました。その使い勝手については、岡田さんにこれから細部の検証をしていただきますが、よい結果が得られることを期待しています。
 因みに、この新しいパソコンはデュアルコアのCPUを持ち、メインメモリ2GBで320GBのディスク容量があるのに、薄型で携帯性抜群、重さも従来のノートパソコンの半分程度で、本当にいうことがありません。ますます便利な世の中になったという実感が身にしみます。

「うか」85号(2011年4月)
 東日本大震災!≠ネんと恐ろしいことが起こったのでしょうか。「想定外」も「想定外」、絶対に起こるはずのないことが、起こってしまったのです。15mを超える津波が、何基もの巨大原発の設備をのみ込んでしまったのです。それを設計した技術者たちは、まさか千年に一度の大津波までは考えていなかったのでしょう。でも、起こってしまったものに対してはただただ対策を考えるしかない。
 いったいこれから先、どうなるのでしょうか。いっとき、原子力関係の材料開発に携わった身としては、その技術の行き着く先がこういうことにつながったという事実に、忸怩たるものがあります。いずれ、多かれ少なかれ放射能の影響は徐々にその範囲を広げてくることは確かです。それがどの程度に収まるのか、ただ固唾をのんで見守るしかありません。何とか無事に収まってくれと、祈るのみです。
 何はともあれ、岡田さん、合格おめでとうございます。自ら障害者支援のための会社を立ち上げ、その業務の運営をスムーズに運ぶために介護福祉士の資格を取られたと伺っています。漢点字普及活動の一環として、当誌の発行を維持していくために、毎回膨大な原稿を執筆されている岡田さんに、畏敬の念を禁じ得ません。

「うか」86号(2011年6月)
 当誌「うか」は当会の広報媒体として大きな存在となっています。しかし、紙媒体としての「うか」は配布先も限られ、ごく少数の関係者にしか行き渡りません。そこで当会では、ホームページを設置してWEB版「うか」としてご活用いただきたいと念願しています。
 このたび、サーバーを提供している業者の都合により、このサーバーの利用が来年5月までということになりました。ついては、サーバーを変更することになりますので、今後は新しいアドレス(http://www.ukanokai-web.jp/)で当会のホームページをご利用頂きたくお願いします。
 このホームページでは、羽化の会の生い立ちから漢点字の基礎に関する資料をご紹介するともに、「うか」の内容紹介をもう1つの主要な柱としています。そこでは「うか」の最新号の内容を紹介するとともに、バックナンバーを少しずつ遡って紹介しており、最終的には創刊号まで収録するような計画を進めています。しかし、その計画を達成するにはまだかなりの時日を要するようで、その点はお許しをお願いいたします。

「うか」87号(2011年8月)
 私が前任者の宇田川さんから当誌の編集を引き継いで、5年あまりたちました。号数にして33号分です。宇田川さんに担当していただいた最長記録に並んだことになります。
 私は編集とともに印刷・製本の担当を、更にその数年前から前任者の宗助さんから引き継いで行っています。いずれの作業も、それなりにちょっとしたコツが必要で、誰でも代わっていただけるというものでもありませんが、それほど難しいものではありません。いつかはこれを引き継いでくれる後継者が出現するようにと期待しているのですが、なかなかそういう人が現れてくれません。ご覧いただければおわかりのように、紙面の構成は全くマンネリ化して、ちっとも進歩していないのではないかとお叱りを受けそうです。ま、作る方としては、毎回同じ方法を踏襲するのが楽で、手間がかかりませんし、いくらかでも読みやすいようにとの工夫は凝らしているつもりです。
 どうぞ、お気づきの点はご遠慮なくおっしゃって下さい。当ホームページの「掲示板」にお願いします。

「うか」88号(2011年10月)
 トップページの「ニュース・お知らせ」にありますように、この度会員募集のための講習会が開催されました。その講習会募集の広告は、NHKボランティアネットを利用することになりましたが、実際のところこれを見て応募して下さる方が本当にいるのかと、心配でなりませんでした。このサイトを見て下さって応募された方は、それなりに点字に関するボランティアでもしてみようかと、かなり明確な目的を持っておられたのでしょう。そうでないとこういう情報が目につくことはありません。
 最初にこのサイトに講習会の情報が載ってまもなく、3人ばかりの人から連絡が入りました。しかし、それ以後はぱったりとなくなり、締切間近になってトップページに載せていただくことができて、これが1週間続きました。最後に時間切れと思われる頃、もう1人の応募者が現れましたが、最初の3人のうち2人は都合が悪くなってキャンセル、結局2人が最終的な応募者となりました。ただ、講習をする側にとってはこれは非常にありがたいことで、個人指導のような形で講習をすることができ、その効果も上がりやすいということです。

「うか」89号(2011年12月)
 ずっと連載で本誌の冒頭を飾っていた「漢点字の散歩」が、休載せざるを得ないことになってしまいました。その辺の事情については、後でご報告することになろうかと思います。
 「報告と案内」の欄で報告しましたように、今年のボランティア募集のための講習会には3人の方が参加され、熱心に受講されて、新しい会員として当会の活動に加わっていただいています。
 「漢字かな交じり文をそのまま入力してテキストファイルを作れば漢点字への変換は自動的にできてしまう」というのがそもそもの漢点訳作業ではあるのですが、一般の文章をいざ漢点字で表現しようとすると、いろいろの制約に遭遇します。墨字の世界では曖昧に使われていて、普段の読書では気にならない文字や記号の違いなど、初めての人には理解するのが難しいようなことが多々あります。短時日の講習ですべてを理解することは困難で、その後の活動の中からいろいろ学んでいただくということになります。
 受講者が多くないということは、講習を進めていく上ではかえって有利で、きめの細かい指導ができます。これからも少数の受講者相手に、毎年でも講習会を開こうと考えているところです。

「うか」90号(2012年2月)
 今年度の図書館への納入書、「寺山修司歌集」と「日本語大博物館」が完成しました。漢点字版として合計6巻です。ほぼ15年前、当会として初めて挑戦したのが、「漢字源」の漢点字版、総計90巻という膨大なものでした。今考えてみても、よくあれだけのものを短時日のうちに仕上げたものと、感無量なものがあります。
 それに比して、最近の製作量は、せいぜい6巻から10巻程度のもの。こういう本格的な点字本の中味は、点字印刷用紙の上から点字部分が浮き出ているものですから、これを書籍の形にまとめるには、綴じ代の部分を折り曲げ、その部分をのりしろとして、全体をのり付けします。
 こういう作業には、会員の皆さんの協力をお願いしています。この比較的単純な作業でも、ある程度の慣れは必要で、毎年協力をお願いする人たちのメンバーは固定されてしまいます。とはいいながら、自分自身でもがっかりすることですが、こうして毎年同じ作業を繰り返しながら、その出来映えは今一つというか、なかなか満足できるものではありません。
 さらに、基本的な紙折り、のり付けの次の段階として、表紙付けの作業がありますが、これもやり直しのきかない微妙な作業であるために、分担してやっていただける協力者が見つからず、困っているというのが現状です。

「うか」91号(2012年4月)
 機関誌「うか」が創刊号を出したのは1997年4月のことですが、この「横浜漢点字羽化の会」の発足はその前の年でした。1996年1月に二俣川のライトセンターで漢点字ボランティア養成のための講習会が開かれました。それまでにパソコンを趣味とし、又仕事にも生かしてきた私にとって、点訳という仕事はまさにうってつけの対象でした。そこから私に「漢点字」のソフト開発という役割が与えられて、今に至っています。
 昨今のIT世界の桁外れの進歩の速さには、ただただ驚くばかりですが、そういう技術の進歩に喜んでばかりはいられません。われわれの活動の受け手である視覚障害者にとって、めまぐるしく変化するIT環境に、関連する特殊なサービスソフトの提供が追いついて行けないことです。端的にいえば、視覚障害者がパソコンを操作するのに不可欠な音声ソフトが、ウィンドウズの頻繁なバージョンアップに追いついて行けなくなってしまったということです。ある程度プログラムの開発ができるといっても、音声ソフトの開発までは手が届きません。困ったことだと、歯がゆい思いをかみしめています。

「うか」92号(2012年6月)
 最近の光通信を含めたIT技術の発達には目を見張るものがありますが、日頃愛用している電話についても例外ではありません。
 私はだいぶ以前、まだ光通信が一般的になってそれほど間がない頃、NTTの光通信、フレッツ光を導入しました。これで電話料金が安くなり、インターネットも快適に利用できるということで、それなりに満足していましたが、しばらく経ってKDDIが光通信を勧めてきて、NTTより安いから是非にということで、半ば強引に切り替えを勧められました。確かに、料金は少々安くなり、実際のところ使用上の問題は全然起こりませんでした。それからまた何年か経ち、今度はNTTが巻き返しを図ってきました。これもまたかなり強引に、NTTに切り替えれば料金が安くなるというのです。ここへ来てKDDIに義理立てすることもなかろうかと、NTTに切り替えることにしました。まだ、実際の工事に入っていませんので、何か問題が発生するかどうかは分かりませんが、とにかく競争社会の厳しさと、その結果消費者にとって経済的な利益がかなりのものになるという実例を、身をもって体験したという次第です。
 それにしてもこの、ひかり電話というのは大したものですね。従来の加入電話では遠くへ市外通話をすると、料金は市内通話の10倍ほどになりますが、ひかり電話(一般のIP電話でも)は全国一律、3分間8.4円、アメリカにかけてもほぼ同じ料金だというのだから昔だったら考えられない料金革命ということになります。

「うか」93号(2012年8月)
 大災害が起こると、そのあとみんなが親切になり、弱者をいたわるようになるが、それが一過性であって、10日もすると元の木阿弥になってしまうということを発見したと、岡田さんは言っておられます。不思議な現象ですね。これが日本人の特性なのでしょうか。岡田さんはこのような心のあり様を、「こころの間口」と呼びました。日本人は日常には「こころの間口」を、必要以上に開こうとしないが、欧米人は、「こころの間口」を常に広く保とうと努力しているようにみえると言います。そうかも知れません。われわれも「こころの間口」を広く保ちたいものだと思います。
 「災害は忘れた頃にやってくる」と古くから言われていますが、最近の大災害の発生状況を見ると、忘れる間もなくやってくるようです。日本列島の南側の大きな断層帯が3つ連動して大地震を引き起こす危険性についても、かなり高い確率で起こることが予測されています。少々の備えをしていたところでどうにもならないでしょうが、そんな災害が現実にならないことをただただ祈るのみです。

「うか」94号(2013年4月)
 岡田さんが元気を取り戻されました。本当に、おめでとうございます。関係者一同ほっとしているところです。
 岡田さんの手術後の闘病生活は一進一退で、かなり長引いていました。しかし、われわれとしてはただただ心配しながら見守る以外になすすべがありませんでした。
 岡田さんは、現在、われわれのグループの漢点字訳と並行して、別のグループを率いて「常用字解」の音訳作業を進めておられます。これは主として中途失明者のために、何とか漢字に関する理解を深めていただこうと始められたとのことです。そのグループの方たちから、個々の漢字の説明をするのに疑問が生じて、岡田さんに質問を浴びせかけますが、どんな問題に対しても適切な回答が返ってきます。それぞれの漢字に関する理解の深さに、皆さんから賛嘆の目が向けられています。毎日、漢字を自分の目で確かめながらの生活をしているわれわれでさえ、文章を書くのにパソコンの変換に頼っていると、たまに手で文字を書こうとするとき、漢字が書けなくなっていることにびっくりします。
 得難い才能を持ち、努力を惜しまない岡田さんに、これからもいつまでも元気でご活躍されることをお祈りします。

「うか」95号(2013年7月)
 今号は執筆者の都合でちょっと原稿数が少なくなってしまいましたが、実際に原稿をお寄せ下さった方々は、いずれも長編の力作をお寄せ下さいました。
 岡田さんが「漢点字の散歩」で、『萬葉集釋注』について分かりやすい解説をされています。万葉仮名というのが日本語の表現方式である漢字かな交じり文の発展の初期段階であるということ、しかし、それが単なる漢字を借りての表音方式ではなく、文字そのものが表す意味も含めているという見方は、興味深いものがあります。
 日本古来の文章表現が縦書きであるというところから、未だに文学書は縦書きであり、新聞も一部の例外を除いてほとんど縦書きになっています。しかし、ここに横書きでなければならない欧文語が、往々にして縦書きで挿入されます。いざこれを読もうとすると、実に不自然で分かりにくいものになっています。アルファベット1つ1つに意味がある略号のようなものは問題ないのですが、いくつかの文字がひとかたまりになって発音され、意味を持つ単語が、1文字ずつ縦に並んだのでは、読めたものではありません。日本語の表現の乱れにますます拍車がかかっているような気がします。

「うか」96号(2013年10月)
 今号は原稿の量が少なかったので、若干薄めの冊子となりましたが、岡田さんの「漢点字の散歩」は、「読書」というものに対して、あらためて多くのことを考えさせられる、貴重な一文となっています。
 この情報過多の時代において、毎日目にする文字の量は膨大なものがありますが、そこに岡田さんのいわれる「読書のフィードバック」というようなプロセスが介在するような読書の機会はあまり多くないような気がします。岡田さんが求められる漢点字書は、まさにそのような読書に耐えうる内容の書物でなければならないのでしょう。
 『常用字解』は、漢点字書としてすでに完成し、図書館に収められていますが、これを音訳しようと、音訳グループの方たちが毎日のようにMLを交換して1字1字の解釈について議論を交わされています。端から見ていても気の遠くなりそうな大変な作業です。こうして練りに練った内容の音訳書が完成すれば、漢点字にまでは手が届かない視覚障害者の方々にとって、「漢字」そのものの理解の大きな助けになるものと期待されます。

「うか」97号(2014年1月)
 「点字から識字までの距離」は、ずっと連載が続いていますが、今回は執筆者の都合でお休みとし、別の記事を掲載しました。
 本会では東京漢点字羽化の会と共同で、新年会を1月19日(日)に桜木町駅近くのブリーズベイホテルで開催しました。参加者の中には、実際に漢点字を使用している、あるいは使用できるように学習している視覚障害者の方もおられます。
 当日も新年会の前にその学習会が開かれました。漢点字の学習というのは、基本的にテキストに沿った独習で、2カ月に1回開かれる学習会に直接出席していただいて、講師の岡田さんからテキストに盛り込みきれない説明を含んだお話や、学習者が疑問に思った点について説明を受けたりします。そういうお話は、漢字そのものについての生い立ちや意味などの説明が多くなります。学習者には、手で触って漢字の形が分かるように、補助者がレーズライターで大きな漢字を書いて、漢字の形を理解してもらいます。私もその補助者の役を果たしながら、岡田さんの漢字に対する知識と理解の大きさに驚かされながら受講者と一緒に漢字の学習を楽しんでいます。

「うか」98号(2014年4月)
 今回は、「編集後記」というよりは、最近のコンピュータ周辺の現状に対する感想です。
 パソコンの基本ソフトであるウィンドウズXPのサービスがとうとう終わってしまいました。世の中が進歩して、便利になるのは歓迎すべきことですが、どうしても、少数者しか利用しない特殊な分野は、置いてきぼりにされます。今はやりのスマホなどはその典型的な例でしょう。すべての操作が、画面上にタッチするだけでできるということは、晴眼者にはとても便利な機能なのでしょうが、視覚障害者にとっては大変な不便となります。 困ったことに、ウィンドウズの最新版、バージョン8は、どんどんスマホ風な使い方に寄ってきているようで、ずっと従来のパソコンに慣れ親しんできたわれわれにとっては、何とも使いにくいものになってきています。
 幸いにして、まだ漢点字ソフトのEibrkwが動かないという話はないので、ほっとしていますが、次に現れる新しいウィンドウズで、これが動かなくなったら、もうお手上げです。そんなときが来ないことをただただお祈りしているばかりです。

「うか」99号(2014年7月)
 台風8号が去って、青空が広がり、真夏の太陽が照りつけます。しかし、南木曾や山形の水害の様子を聞くと、何ともやりきれない気持ちが一杯です。今年はエルニーニョの影響で梅雨明けが長引き、冷夏になるかも知れないという予報もありますが、この暑さからはとてもそんな様子は想像できません。
 岡田さんの「案内」にあるように『常用字解』の音訳作業が進んでいます。音訳には、原本を読み下すだけでは理解されにくい部分を、耳から聞いただけで理解できるように、文字や字形の説明をすることが必要です。これは漢字1字ずつについてその形や変遷を説明する文章を作ることです。担当者お一人お一人が、自分の担当する範囲の漢字について、そういった説明文を作製し、それを岡田さんに見てもらっています。それらのやりとりはメーリングリストを介して行われ、私もそのメンバーに入っているので、皆さんのやりとりを目にしています。1つの文字の形を説明するにも適切な表現方法を模索して、何度もやりとりが行われています。そういう作業に、真剣に取り組まれている音訳者の皆さんの熱心さに、頭の下がる思いです。
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