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ニ ュ ー ス ・ お 知 ら せ

      ご報告とご案内    岡田 健嗣

  1  賛助会費のご納入、大変ありがとうございました。
  左に、昨年度(2023年度)に本会の賛助会費をご納入いただきました皆様のご芳名を記して、感謝に替えさせていただきます。

  中村裕一様、木原純子様、雨宮絢子様、関口常正様、岡稲子様、村田忠禧様、河村美智子様、政井宗夫様、田崎吾郎様、武田幸太郎様。

  皆様、心より御礼申し上げます。誠にありがとうございました。


  2  今回も、昨年度横浜市中央図書館に納入しました『芭蕉俳句集』より、1句をご紹介します。

  足洗(あらう)てつゐ明(あけ)安き丸寐(まろね)かな    (芭蕉翁真蹟拾遺)

  【考】 貞享五(1688)年の作。季語は「明安き(短夜)」で夏。底本は「右小築庵春湖蔵」と注記し、『笈の小文』の旅中吟三句と並記して掲載する。
  【解】 旅宿で洗足を済ませ、着の身着のまま横になったと思ったら、早々と夏の短夜が明けてしまった、の意。「足洗て」は旅先で宿舎に到着した時などに、洗足盥で足を洗うこと。「丸寐」は着物を着たまま、その場にごろ寝すること。
  【諸注】 イ ◇ 『大系』『全発句』『全講』は未収録。◇ 『校本』は、底本に『笈の小文』所収句と並記されることから「信ずべきものと思われるが、他に所見がないので一応存疑とする」と述べる。◇ 『全句』は「他に出典を見ないために多少疑は残るが、まず信ずべきもの」だとし、「〝短夜〟とか〝明易し〟には、『古今集』の〝夏の夜の臥すかとすればほととぎすなく一声にあくるしののめ〟(紀貫之)などが常に発想の脈をなしている」と述べ、「これもその系統に属し、〝足洗うて〟とか〝丸寝〟とかいうところに俳諧味を生かした作」だとする。◇ 『全句集』も存疑の句としつつも、「他に所伝はないが、真作の可能性は高い」とする。◇ 『集成』は「長旅の旅情の1齣。〝足洗うて〟に、1日の旅を終えて旅籠に着いた時の、ほっとした心持がこもっている」と説く。◇ 『新編』は「旅籠泊り(食費と寝具の損料を払う泊り方)でない限り、旅先の丸寝は珍しくない」とし「ここは夜更けの旅情などしみじみ反芻するいとまもなく、あっけなく一夜が明けた体験を、〝丸寝〟の1語でみごとに表現している。その軽い微苦笑の中に1句の俳諧性を認めるべき」とする。◇ 『角川ソフィア』は「旅寝の1齣を軽妙に表現して飄逸」と評する。  ロ ◇ 『詩人選』は『笈の小文』の旅に言及し「現実の状況に密着した段階での、1つのデッサンといえなくもない」という。
  【形】 底本にのみ所収。
  【評】 他に所伝がないため、存疑の扱いともなっているが、句としては長旅の中での1齣が軽妙に言い取られている。『笈の小文』とも関連させつつ、句の旅情を検討する必要があるか。  [稲葉有祐]
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