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  点字から識字までの距離(52)

    みどり学級へのサービス(1)
     みどり学級でのサービスの開始
                      
山内 薫(墨田区立緑図書館)

 緑図書館から歩いて3分程のところに緑小学校がある。緑小学校は明治45年に創立された古い学校で、もうじき95周年を迎える。緑図書館とも古くから縁があり、昭和29年5月11日、緑小学校内の一階に寺島図書館緑分館ができて開館した。記録によるとこの分館は午後2時から午後9時までまで開館していたという。その後昭和32年の11月15日、緑図書館が独立館として建設されたために、緑分館は緑小学校から移転した。 この緑小学校に「みどり学級」という心身障害学級がある。区内には6つの小学校に知的障害学級があり「みどり学級」もその内の1つである。
 緑図書館とみどり学級の関わりは3年前にさかのぼる。緑図書館では隔月で『情報誌みどり』というA3版裏表印刷の館報を発行していた。その第9号、2003年2月号で「学校と図書館との連携」を特集し、学校と関わる「図書館見学」「出張おはなし会」「団体貸出」などを紹介した。この内「出張おはなし会」は近隣の小学校のクラスに出向いて絵本を読んだり、紙芝居をやったり、パネルシアターなどをすると共にブックトーク(本の紹介)を行うもので、とても好評を博している。現在は出張ブックトークと称して行っており、昨年度などは近隣の5つの学校の延べ64学級に出向いて実施している。『情報誌みどり』第9号では3人の先生方に数行の感想も寄せて頂いた。

左右の糸を交互に引くと上に揚がるこいのぼり
中学生による紙芝居

 この情報誌を見て、みどり学級でも出張お話し会をやってもらいたいと担任のT先生が図書館を訪れた。そこでまず、みどり学級を見学させて頂くことにした。4月に訪問したその時間は丁度、専科の先生がやってきて音楽の授業を行っているところだった。クラスには4人の子供たちがいたが、その内K君という3年生の男の子は今年みどり学級に編入してきたばかりで、椅子に座っていることができず、教室内を歩き回ったり、教室の外に出て行ったりしていた。他の5年生2人と2年生1人の女の子は椅子に座って音楽の授業を受けており、教室の前に置かれているドラムセットを使ってピアノに合わせてリズムを取る課題などが行われていた。私たち訪問した3人の職員も授業に参加させてもらい、ピアノに合わせて太鼓やシンバルを叩いたりした。T先生と相談の結果、毎週木曜日の朝が学校全体の「読書の時間」に当てられているので、月1回第2木曜日の朝9時からの1時限目に訪問して紙芝居などを行うことになった。
 翌、5月の第2木曜日、8日がいよいよ第1回のみどり学級訪問日だった。その日の出し物は「せんたくかあちゃん」の大型絵本、絵本「どうながのプレッツェル」、「はらぺこあおむし」の大型絵本などを読み、その後でトイレットペーパーの芯の円筒を使って作ったこいのぼり3尾を揚げながら「こいのぼり」の歌をみんなで唄った。(写真のように、3つの筒の2カ所に糸を通し左右の糸を交互に引くと円筒のこいのぼりが徐々に上に揚がっていく仕掛けのこいのぼり)
 第1回訪問の時、K君は初めの内は席に座っていたが、絵本には見向きもせず、分厚い『イミダス』のページをめくりながら、開いたページの1項目の文字を指で押さえながら声に出して読んでいた。実は昨年度、別の学校の2年生のクラスで出張おはなし会を行った際に、1人だけ席を立っていて、どうも落ち着いてお話しを聞けない男の子がおり、名前を覚えていたのだが、その子がK君で、この4月からみどり学級に編入してきたことが分かった。「こいのぼり」の歌が始まる頃には席に着いていることができず、外に出て行ってしまい、担任のT先生が外で相手をしていたように記憶している。
 6月の2回目の訪問の時には、やはり大型絵本の『そらまめくんのベット』を読んだが、担任のT先生がK君の手を取って前に出て、大きな絵の中のそら豆を指で指して押さえるように導いた。その結果K君も少しは絵本に興味を示したようだった。7月の第3回目の訪問には、たまたま近くの中学校の生徒六人の職場体験学習があり、一緒にみどり学級に行って、大型紙芝居などをやってもらった。またピアノが弾ける中学生がいたのでピアノ伴奏で「かたつむり」の歌を唄いながら、手遊びを行った。しかし、K君はまだお話しや歌に馴染むことができない様子だった。

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