「うか」86号  トップページへ 
     点字から識字までの距離(82)
             盲学校・ろう学校生のインターンシップ(6)

                           山内 薫(墨田区立あずま図書館)
 その日の午後は墨田区の障害者サービス担当者が集まる会議に参加してもらった。その日の議題は次のようなものだった。
1.音訳者養成講座(初級)について、受講者選考(採点表配布)
 受講希望の11名から出された課題の点数表を配り採点結果を報告。今回は全員合格となった。合格通知はあずま図書館で出す。(毎年開催している音訳者養成講座初級では受講見申込者の適性を計るため熟語の読みの課題50題と折々のうたの1日分を録音してもらう課題を課している。自分で調べて回答してもらう熟語の課題を10以上間違えた人、折々のうたに出てくる「宝生流」と「速水御舟」を間違えて読んだ人は要注意とし、余りひどい人は受講を遠慮して頂いている。20人に1人くらいは適性を欠いた人が出てくる)
2.「24時間テレビ」寄贈の障害者サービス機器の搬入日程の決定
3.インターンシップ・図書館実習について
  文京盲学校  8月4、5日 インターンシップ
  白百合女子大 8月4日〜9日 障害者サービスを中心とした図書館実習2名
  葛飾ろう学校 8月11日〜14日 インターンシップ
 (この年は例年になく実習生が多かった。白百合女子大に関しては実習が取得単位になっている)
4.22年度予算について
 八広図書館からの高齢者施設で使う「ワイヤレスマイク、スピーカーセットとプロジェクター」の要望が出ている。あずま図書館ではプレクストークPTP1を備品として要求したい。
5.点訳図書の保管について
 点訳図書は現在紙に打ち出したものを緑図書館で保管しているが、今後データで保管する方向で考えたい。データのないものについてはむずかしいが、データのあるものについては点訳グループの協力を得ながら、必要に応じて打ち出すことにする。データはハードディスクに保管しておく。そのため外付けハードディスクー60ギガのものを購入する。
6.墨田福祉作業所への見学等について
 12日に福祉作業所に見学に行く、作業所で貸出する図書を運ぶ配本連絡車の予算を要求する。
 (「うか」78号〜80号参照))
7.統計について
 東京の都立中央図書館の障害者サービス調査が様式を変えたので、それに合わせて墨田区の障害者サービスの統計の取り方も変更し、各館で共通認識を得たい。宅配の回数は出動回数。
 障害者サービス用資料の貸出や所蔵タイトル数は原本に換算して数える。
 会議中Tさんは私の隣の席に座ってもらい、私がパソコンの画面上に話されている内容を要約して書いていくという方式で会議に参加してもらった。
 この会議は16時半近くまでかかってしまったが、基本的に16時から17時までの1時間は「職場実習日誌」を付ける時間にしていたので、急いで障害者サービス室に戻ってもらった。
 実習生は日誌の「仕事の内容(具体的に詳しく)」欄と「反省・感想」欄にそれぞれ記入し、それに対して「実習指導者の講評・助言」欄に私が記入、家に持ち帰って保護者が「家庭より」という欄に記入する仕組みになっている。Tさんは初日の反省・感想欄に次のように記している。
「今日は初日で、その上1人なので緊張しました。皆さんに親切にして頂いた緒陰ですることができました。窓口での仕事も、ちゃんと出来るかすごく不安だったのですが、山内さんのサポートもあり、ひどいミスもなく無事仕事ができたのでホッとしました。まだまだあと3日もあるので頑張ります。」
バス停から木村さんのガイドをする
 2日目は午前中漢点字の集まりがあるので、朝図書館近くのバス停まで岡田さんと木村さんを2人で迎えに行った。いつもは私が自転車で迎えに行き、木村さんは前の籠に、岡田さんはサドルに手を置いてもらって、3人で歩くのだが、その日はTさんがいるので、Tさんに木村さんのガイドをお願いした。図書館の障害者サービス室に着くと3人の意見交換が始まった。岡田さんや木村さんの質問を私がワープロの画面上に打っていって、その質問を見ながらTさんが回答するという形式で、行った。以下に質問回答などその時に交わされてた内容を紹介する。ただしTさんの答えの大半は文字として残していないため今となっては分からない部分もあることをご了解願いたい。
(岡田)質問です。文字はどうやって憶えたんですか?
(T)言問小学校で行われていた聞こえの教室には小学校1年から4年まで通い、その後江東聾学校へ転入し、中学からは葛飾ろう学校です。
(岡田)Tさんの話していることは、とてもよく分かります。3歳で失聴したそうですが、それまでの音声言語がかなりおおきく影響していると思いますが、それをどう感じていますか?
岡田さん、木村さんと
パソコンで要約筆記
田中さんも加わる
(岡田)生まれつき聞こえない人との違いを考えますか?
(岡田)もごもご言わないように気をつけます。
(山内)おまんじゅうをプレゼントするそうです。岡田さんは明日清風園で実習の相談をするそうです。介護福祉士の資格を取るための実習だそうです。
(岡田)ありがとうという手話は相撲で懸賞をもらうときの手刀からきているんですね。
(岡田)言問小学校では手話は教えてくれなかったんですよね。
(T)要約筆記は要約する人によって違ってしまう。
(岡田)要約筆記はあとで検証されないので問題です。
(木村)聾学校のあるところは、足立区にあるのに葛飾聾学校なんですか。北千住で乗り換えですね。方向が逆で電車はすいていて良いですね。(綾瀬下車だが住所は葛飾区西亀有)
(木村)聾学校の生徒は何人ですか。中高一緒ですね。クラスは何人ですか?
(T)6人です。学年は28人5クラスです。
(岡田)クラス分けは聞こえの程度によってですか?
(T)いいえ違います。
(山内)学校の先生にろうの先生はいますか?
(T)4分の1です。
(岡田)漢点字の世界ではルビ(ふりがな)の扱いがとても大変だった。
(山内)元々振り仮名に小文字はなかったんですけれど、最近は小文字の振り仮名が出てきました。(たとえばハリーポッター)
 その後最近デイジー化した本『プルーストとイカ読書は脳をどのように変えるのか?』(メアリアン・ウルフ著 小松淳子訳 インターシフト 2008)の話題やベランダ園芸の話などに話は及び対話は1時間半にも及んだのだった。
 その日の反省・感想欄「今日は漢点字の集まりがありました。視覚障害の方との交流はあまりないので良かったです。コミュニケーションがうまくとれるか心配でした。最初の方では山内さんの要約筆記で質疑応答のような感じでやりました。色々な人と交流ができ、手話を少しですが教えることができて良かったです。」
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