「うか」135  トップページへ
ニ ュ ー ス ・ お 知 ら せ

      ご報告とご案内          岡田 健嗣

 前号でご報告致しましたように、横浜漢点字羽化の会は、今年度を以ちまして、活動を停止することとなりました。
 それに伴いまして、本誌・機関誌『うか』も、今号135号を以ちまして、終刊とさせていただくこととなりました。
 約30年という長年月活動を継続して下さいました会員の皆様には、感謝の言葉を知りません。心より御礼申し上げます。
 同様に、長年に渡りご支援を賜りました賛助会員の皆様、時に応じて貴重なご意見やご助言を賜りました各方面の皆様に、深く感謝申し上げます。
 また、本誌の音訳や点線文字の作成、さらに本会の活動の流れとしての『常用字解』の音訳等、本会の活動を周辺からご支援下さいました皆様、重ねて御礼申し上げます。大変ありがとうございました。
 そして、漢点字を学んで下さっておられます視覚障害者の皆様、私どもの活動をご信頼下さいましたことに、深く感謝申し上げます。願わくは、習得した漢点字を、広く読書に生かしていただければ幸甚です。

 思えば、故・川上泰一先生が漢点字を世に問うて、私ども視覚障害者が漢字の世界を初めて知ることとなりました。
 当時の視覚障害者を巡る世界では、この漢点字に対して、決して好意的な対応がなされたとは言えません。むしろ、「漢字の点字??」と、漢字を表す触読文字であることそのものに、疑念をを持たれ、いや、見て見ない振りをしてやり過ごしておられる方がほとんででした。
 本会の活動は、そのような中で始まりました。そこで私どもの活動は、勢い、漢点字の有用性、触読文字であって漢字の持つ機能を充分発揮し得るものであるかというところから始めることとなりました。それは、岡田自身が試験台になって、漢点字を使って、どこまで読み書きができるかという、言わばテストパイロットになった気分で、多くの資料の漢点字訳を進めることとなりました。
 『漢字源』の完成後、『論語』『唐詩選』に挑戦し、『常用字解』の刊行とともにその漢点字訳に着手し、『萬葉集釋注』の製作に至るという、ほとんど一般の点訳活動ではなされないような活動となりました。
 そこから分かったことが、「漢点字」は、触読文字としての「漢字」という位置づけにふさわしい文字であるということでした。視覚障害者にとっては、文字と言えば触読できる文字しかありません。それはルイ・ブライユの開発した6点で表示する「点字」しかありません。そこにわが国の標準表記である「漢字」を表す文字として、「漢点字」が登場しました。この「漢点字」が充分文字として機能するかということが、私どもにとって最も気になるところでしたが、幸い現在のところ、それを否定するデータはありません。
 むしろ、「漢点字」を使おうとしない視覚障害者や、認めようとしない視覚障害者周辺の晴眼者の皆さんに、この「漢点字」を使うことで、視覚障害者の文字の世界が開けることを、明らかにして行く必要が、現在もなおあります。

 残念ながら本会の活動はここで停止しますが、その成果は、横浜市中央図書館にございますので、どしどしご利用いただきたいと存じます。
 今年度の納入書として、『諸注評釈新芭蕉俳句大成』(堀切実(ほりきりみのる)、田中善信(たなかよしのぶ)、佐藤勝明(さとうかつあき)編、明治書院)を準備しております。最後までの納入は叶いませんが、漢点字で読むことで、文学を鑑賞していただけることは確かと考えます。
 なお、本誌には、(参考資料)「字式について」は割愛せざるを得ませんでした。近い将来、漢点字データとテキストファイルとして、『常用字解』を、国会図書館に納入する予定でおります。取り分け音訳者の皆様に置かれましては、文字の説明、字形の説明のご参考に供していただけますことを、願って止みません。各図書館等を通して、お手にしていただければと存じます。
 ホームページは、今暫く運用を継続致します。
 東京漢点字羽化の会の活動は、継続しております。
 皆様方のご厚情に感謝して、この稿を終えさせていただきます。
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