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『うか』100号記念特集号

              羽化の会に参加して


                             田中 かほる

  機関誌「うか」百号!発刊 おめでとうございます。
100冊も発行したという事実はすごいですよね。やや、こぶりの冊子とはいえ、そこには美しい表紙絵から始まり、多くの方々の文章が載っている…、それらはほぼ会員の方の文章で、内容は重く大切なものばかり。こうして百号も続いたのはそれらをまとめられた岡田会長と木下編集長の努力の賜物です。心して読まねばいけませんね。
 
 そもそも、私が羽化の会にお世話になり始めたのはもう十数年前でその頃はまだ現職でした。私は、運良く視力に恵まれていて、親や弟妹とはちがい近眼にならず70代の今でも裸眼で新聞が読めるという人間なので、中学の頃からずっと、もし仕事をしなくなったら点字を習って良い目の恩返しをしようと決めていました。
 さて、ついにその時が来たのですが、当然60歳になっていた私は既に記憶力と意欲が減っていて点字が新しく頭に入るのか、怪しくなってきました。ただ、運の良いことにその頃パソコンやワープロが当たり前になって来ていて、点字を覚えなくてもできる仕事があるということを知りました。で、そういうことが出来るのか地区の区役所へ聞きに行きましたところ、羽化の会の存在を教えてもらえ、会にご連絡をしたのが発端でした。

 最初は準会員として機関誌、まさしくこの「うか」や資料を送って頂き活動の内容を知ったのですが、退職後、会員となると同時に、早速岡田さんから仕事が届きました。が、入力用の講習などを全く受けずに、マニュアルを見て岡田さんの指導を受けながら一人で始めたのですから、今から思うと無謀?かつ大胆なことでした。
 最初は毎週、新聞の医療記事の入力でしたが、そのうちに仕事はどんどん増え、いつの間にか多い時には違うジャンルのものを4本も引き受けていました。何しろ、羽化の会の入力は高度な文章と文字が多く、私などこれから先、手に取ることもないだろうと思うようなものが多数。これを誰が読むのだろうと思いつつ、入力をさせて頂いたものでした。

 こうして何年も入力をしているうちに私はすっかり集中力が落ち?ました。校正後の自分の仕事を見ると、その入力ミスの多いこと! 我ながら自己嫌悪に陥るばかりでした。
 そこで、申し訳ないことながら、現在では入力の仕事を辞退、出来るだけこの機関誌作りの作業と漢点字講習会に参加するという方針に勝手に変更しています。

 そうそう、私が羽化の会で、少しはお役に立ったかなと思うのは、岡田さんからの要請で「漢文の紹介」をしたことかもしれません。何も私が講義をしたわけではなく、初歩の漢文の本を1冊まるごとご紹介したわけなのですが、漢文には返り点などのいろいろな約束事があり、それらは全部縦書きの行の中に表されていますよね。ですから漢文の本を漢点字で横書きで表す事など簡単にはできません。で、表記のことで問題にぶつかるたびに岡田さんと連絡しあい、最終的に全部岡田さんが表記の発明?工夫をなさり、それによって羽化の会の漢文が始まったのです。

 私は、たまたま現職の時に、仲間と小学校で習う全漢字を教科書とは違うテキストとして作りまして、その時にずいぶん漢字の勉強をしました。白川先生のお話を聞いたり出版社の方と話したりもし、おかげで六書を初めとして漢字の成り立ちや歴史も知り、漢字への興味と関心が深まりました。それが今、この羽化の会の漢点字講習会に参加していても役立っている…過去の経験や体験が思いもかけないところで、役立つといいますがその通りだと実感させられています。

 ところで、羽化の会の会員の方々は、みんな気性がさっぱりとしていて親切で明るく仕事を積極的になさる方ばかりです。ボランティアですから利害関係がないとはいえ、グループによっては色々と気を遣うところもあるそうで、そういうところのない羽化の会はすばらしい会です。ですから、今後も羽化の会は発展し、もっと点字の蔵書が増えることでしょう。でも人はイヤでも年を取ります。会員も高齢化していくのは止むを得ないこと、ですからこの気持ちのよい羽化の会に、より若い人が、多数集まって来て下さるよう願っています。
 
駄文を連ねましたが、岡田さんと木下さんという二本柱のお二方をはじめ、会員の皆さんの今後のご健康を心から願いつつ、閉じさせて頂きます。

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