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漢点字講習用テキスト
初級編 第5回

    3  複合文字 (1)

  ここで言う〈複合文字〉とは、二つ以上の〈部首〉(漢字のパーツ)を、ブロック状に組み合わせた構成の漢字です。〈部首〉は、元々一つの文字です。前回ご紹介した〈基本文字〉がそれです。〈部首〉は〈複合文字〉の中で、「偏」、「旁」、「冠」、「脚」、「繞」などと呼ばれて、その文字の音や意味を表します。
  〈複合文字〉は、漢字の分類法の「六書」では、〈会意文字〉と〈形声文字〉に当たります。とりわけ〈形声文字〉は、漢字の八割を占めていますので、〈基本文字〉の理解が、〈漢字〉の理解に繋がることが分かります。
  〈漢点字〉の多くは、二マス「 」の形で表されます。一マスに一つの部首を割り当てて、全ての部首を、左右の関係で表します。そのために、元来は上下の関係で表さなければならない文字も、左右に配置して表します。
  また、二つのマスだけで表すために、三つ以上の部首を含む文字は、その中の二つの部首を選択して表すことになります。
  さらに、点字の符号には限りがありますので、異なった二つ、三つの文字が、同じ点字符号に重なることがあります。そのような場合、左右の部首の配置を逆にしたり、部首の選択を変えたりすることで回避します。
  それでは、〈複合文字〉の第一回をどうぞ。


  1.漢数字および第一基本文字を部首とした文字 (1)
  ここでは、これまで出て来た文字、漢数字と第一基本文字を〈部首〉(パーツ)として組み立てられた文字を、ご紹介します。

  ※ 「木」を部首として含む文字
  (1)  林   リン  はやし
  「木」を二つ並べた形の文字です。木が二つで「はやし」、このような文字を「六書」では、〈会意文字〉と分類しています。〈会意文字〉とは、「意味を合わせて作られた文字」の意で、元の文字の意味を寄せ合わせてできた文字ということです。漢点字でも、「木」を二つ並べた形です。
  「竹林」「密林」「林間」「広葉樹林」「林業」「松林」「雑木林」

  (2)  森   シン  もり
  「木」を三つ、「林 」の上にもう一つ「木」を乗せた形の文字です。漢点字では、二マスに収めるために、二マス目に3を表す「」の符号を入れました。
  「森林」「森閑」「鎮守の森」

  (3)  材   ザイ サイ  き
  「木偏」の右側に「才 」の形の文字です。木製品の元になるもの、つまり木材です。現在では、製品の元になるもの全般に用いられます。この文字は、通常音読みの「ザイ」とだけ読まれます。漢点字では、「 (才 )」と「 (木)」で表されます。ご覧のように、偏と旁が反対に配置されています。後に出て来る「枯」と、点字符号が重なるからです。
  「木材」「材木」「材質」「材料」「素材」「資材」「人材」

  ・「相」とそれを含む文字
  (4)  相   ソウ ショウ  あい み‐る
        たす‐ける
  「木」と「目」で構成された文字です。二つのものの関係、ものの形を表します。また、国を治める責任者、大臣の意味があります。「あい」と読んで、強調の接頭語としても用いられます。漢点字では、「 ( 」と「 (目)」で表されます。
  「相談」「首相」「外相」「人相」「骨相」「相互努力」「相思相愛」「相手」「相済まない」

  (5)  想   ソウ ショウ  おも‐う
  「相 」の下に「心」を付けた形の文字です。「心におもう」の意で、考えや像が心に浮かぶ動きを表します。漢点字では、「 (相 )」と「 (心)」で表されます。「相 」の「目」を省略して、「心」を付けた形です。
  「想像」「想念」「幻想」「思想」

  ・「果」とそれを含む文字
  (6)  果   カ  は‐たす は‐てる
  「木」の上に「田」を乗せた形の文字です。作物や木の実が実ることを意味しています。そこから、「物事の終わり」や、「仕事の出来映え」などを表します。この「田」は、田畑のことではなく、木に、たわわに木の実がなっている姿を表しています。「田」はこのように、本来の意味ではなく、「一杯に詰まった」とか、「沢山のものが寄り集まった」という形を表したりもします。漢点字では、「 ( )」と「 (木)」と、上下の関係を左右に置き換えた形をしています。
  「果実」「果汁」「果肉」「果樹」「結果」「成れの果て」「果てしない荒野」

  (7)  課   カ  はか‐る こころ‐みる
  「果 」の左に「言偏」を加えた形の文字です。「言偏のカ」として、役所や会社などの組織の単位に用いられています。漢点字では、「 ( )」と「 (果 )」と、「木」を省略した形を表しています。
  「課長」「捜査一課」「課税」「課題」

  ・「休」とそれを含む文字。
  (8)  休   キュウ ク  やす‐む いこ‐う
  「人偏」に「木」の形の文字です。人が木に寄り添って休息をとっている姿と言われます。漢点字でも「」と「」の符号で表されます。
  「休日」「休憩」「休息」「連休」「定休日」「正月休み」

  (9)  保   ホ ホウ  たも‐つ
      やす‐んずる
  「休 」の「木」の上に「口」が乗った形の文字です。この右側の旁には、赤ちゃんをおむつでくるんで大事にするという意味があります。そこから、ものや人を守るという意味になりました。この文字の音は、通常「ホ」と読まれて、「ホウ」は、固有名詞に用いられます。漢点字では、「 ( 偏)」と「 (口)」で表されます。「木」が省略されています。
  * この文字の旁「呆」は、独立した文字でもあります。音は「ホウ」、訓は「あきれる」ですが、本来の意味は、「大事にくるむ」です。漢点字の符号は、「 」と三マスです。
  「保安」「保護」「保健」保険」「保証」「担保」

  ※ 「未 」を部首として含む文字
  (10)  来   ライ  く‐る きた‐る
        きた‐す
  「未 」の長い横棒の左右の上に点を付けた形の文字です。「未 」は、先の細くなった植物の形を表しています。「来 」は、元は実った麦の穂を表していましたが、下って、「くる、きたる、きたす」の意味を表すようになりました。漢点字では、旧字の「來」が、長い横棒の代わりに、左右に「人」を配しているところから、「」と「」で表すようになりました。
  「来月」「来年」「来客」「来賓」「来日」「元来」「本来」「未来」「将来」

  (11)  味   ミ ビ  あじ
        あじ‐わう
  「口偏」に「未 」の形の文字です。「未 」が音を表して「ミ」を、「口」とともに、口で細かく味わうことを表します。食べ物の味ばかりでなく、心に感じる面白さの意味にも用いられます。漢点字では、「 (口)」と「 (未 )」で表されます。
  「味噌」「味覚」「味読」「意味」「趣味」「含味」「吟味」

  ※ 「本 」を部首として含む文字
  (12)  体   タイ テイ  からだ
  「人偏」に「本 」の形の文字です。「本 」で、全体に揃ったからだを表し、「人」を付けて、人のからだであることを表します。漢点字では、「 (人)」と「 (本 )」で表されます。
  「体格」「体操」「体育」「体系」「身体」「本体」「物体」「車体」「気体」「液体」「固体」

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