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みどり学級での公開授業(2)

                        
山内薫(墨田区立あずま図書館)

 年が明けて1月の末に担任のD先生と打合せをし、先生が指導案を作成した。教科は国語や総合的な学習の時間ではなく「生活単元」となっていた。この生活単元というのは特別支援教育の中で「児童生徒が生活上の課題処理や問題解決のための一連の目的活動を組織的に経験することによって,自立的な生活に必要な事柄を実際的・総合的に学習するもの。」また「生活単元学習の指導では,いろいろな領域や教科に関わる広範囲の内容が含まれる。」とされている。さらに生活単元学習の備えるべき条件として「実際の生活から発展し,生徒の興味に基づいたものであること。」「生徒の心身の発達水準などにあったものであり,個人差の大きい生徒の集団に適応するものであること。」「必要な知識・技能の獲得とともに,生活上の望ましい習慣・態度形成をはかるものであること。」「生徒が目標を持ち,見通しを持って,単元活動に積極的に取り組むものであること。」「1人ひとりの生徒が力を発揮し,取り組むとともに,集団全体が単元の活動に共同して取り組めるものであること。」「それが終わったときに,生徒が大きな満足・成就感が味わえるものであること。」「単元の活動によって身に付けた関心・技能・習慣・態度が学校外の生活にも適用され,単元終了後の生活にも生かされるようなものであること。」等々がうたわれている。(長崎県教育センターのホームページより)

 今回の公開授業指導案の題は「お話しを楽しもう『3びきのやぎのがらがらどん』」で、活動の目標は「・緑図書館の方々とのふれあいを通して、お話を楽しむとともに、いろいろな本があることを知る。・読書活動に参加し、本の世界を楽しむことができる」の2つが設定されていた。公開授業指導案の取り組みの経緯は五時限で構成され、1時間目が導入で、『3びきのやぎのがらがらどん』の読み語りと歌の練習、2時間目から3時間目にかけては「やぎのお面をつくろう!」で、ヤギのお面や背景作り、三時間目は「本に出てくる音(擬音語)をさがそう!」で、絵本の中に出てくる音と似ている楽器さがし。四時間目が「緑図書館の方との劇遊び1『3びきのやぎのがらがらどん』」。五時間目が公開授業の本番で、「かいじゅうのブックトークと『3びきのやぎのがらがらどん』の劇あそび2」となっていた。

 また、学習活動の展開では「読み語り(緑図書館職員)を聞く『かいじゅうたちのいるところ』」「ブックトーク(緑図書館職員)テーマ「かいじゅう」『つきよのかいじゅう』など」が組み込まれていた。そこで今回の公開授業に合わせて『かいじゅうたちのいるところ』(モーリス・センダック さく、じんぐうてるお やく 冨山房)のジグソーパズルを作成することにした。廃棄した絵本を利用したジグソーパズルは以前から数多く作成してきた。絵本は図書館の資料の中でも群を抜いて利用度が高く、良く借りられる絵本は複本といって、複数購入して蔵書にするのが普通である。人気の絵本は小さな子供たちに何百回も借りて行かれるので消耗も激しく、破損も多い。しかし中にはいたずら書きやページが破れてしまったために、それ程消耗していなくても廃棄せざるを得ない絵本も出てくる。そうした絵本のまだ痛んでいないページを利用してジグソーパズルを作るのである。材料は絵本のページの他に厚いボール紙で作られた本の外箱(最低でも厚さ2〜3ミリ)を使う。最近は外箱入りの本が少なくなってきたが、それでも高価本や全集などは箱に入っているものが今でもある。一般に図書館の蔵書として書架に並べる本は外箱を付けないので、多くの図書館で外箱は捨てられる運命にある。絵本のジグソーパズルはそうした捨てられてしまう本の外箱の廃物利用も兼ねている。外箱は分解して表紙と裏表紙に当たる大きい2つの面を利用する。

 ジグソーパズル作りの手順は以下のようなものである。
 (1)パズルにしたい絵本の一ページを選ぶ。
 (2)そのページよりも一回り大きい本の外箱の内側の白い面に木工用ボンドを塗り、絵を貼り付ける。この際木工用ボンドは凹凸が出来ないように薄く均一に塗る必要があるので、ヘラか縁が直線の割り箸などを利用してボンドを均す。また絵を貼った後、絵を傷つけない材質の平らなもので上から押しをして良く貼り付くようにする。私は以前は木製のジッポライター、最近はワインの栓のコルクを使っている。
 (3)ボンドが乾いたらジグソーにする部分を切り抜く。パズルの形は任意だが、通常は四角く切り抜き、最終的な外縁(パズル全体の大きさ)よりも最低一センチは余白を残した内側を切り抜く。また例えば『りんごのき』(エドアルド・ペチシカ ぶん、ヘレナ・ズマトリーコバー え、うちだりさこ やく 福音館書店)という正方形の絵本の場合などは、リンゴの形に切り抜き、内側に赤い艶紙を貼るなどの工夫をすることが出来る。(写真1)
写真1 りんごのき 
写真2 かいじゅうたちのいるところ
 (4)切り抜いた内側の部分はカッターで自由に切ってゆくのだが、各ピースの大きさが余り不揃いにならないこと、各ピースの切り口の接点は出来るだけ直角になるようにすることなどを気をつけたい。ピースの角が鋭角になると絵が剥がれやすくなったり、角が潰れやすくなる。またカッターを使って切ると切り口が斜めになるので、切ったままでは枠の内側に収まりきらなくなる。従って真上から見て切り口が絵よりもはみ出している部分は丁寧に切り落とす必要がある。
 (5)内側をくり抜いたパズルの外側をもう一つの外箱の厚紙に貼り付ける。その際内側に色紙を貼ったり、他のページの絵を貼ると良い。例えばミッフィーで知られる『ちいさなうさこちゃん』(デック・ブルーナ ぶん・え、いしいももこ やく 福音館書店)のシリーズには「泣いているうさこちゃん」と「笑っているうさこちゃん」、「水着のうさこちゃん」など様々なうさこちゃんのページがあり、ほとんどが同じ大きさで顔が重なるので、下絵に「泣いているうさこちゃん」を使い、ジグソーに「笑っているうさこちゃん」を使うと泣き顔から笑い顔に替わるパズルが作れる。外枠にたっぷり木工用ボンドを付けて電話帳や百科事典など重い本で押しをして乾くのを待つ。乾いたら外側をきれいに裁ち、ピ−スを埋め込んでできあがりとなる。
 今回みどり学級のために作成したジグソーパズルは『かいじゅうたちのいるところ』のパズルで一二種類作成した。パズルはほぼ二〇から三〇ピースで、すべて正方形を組み合わせた図形のピースとした。同一の正方形が三つで組み合わされた図形は「トロミノ」といい縦長と矩形の二種類の形、四つで組み合わされた図形は「テトロミノ」といい五種類の形が出来る。正方形が五つのものは「ペントミノ」と呼ばれ一二種類の形が出来る。この三種類の図形と、それぞれ難易度別にピースの数を決めて作成した

 パズルは評判で子どもたちは公開授業の前に何度も楽しんだようだ。補助教員の先生は「本への導入としてこんなに良い教材はない」と言ってくれた。

               写真3・4 パズルに興じるみどり学級の子ども              

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