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字式について(1)
                    
岡田 健嗣

参考資料

 漢点字の創案者である川上泰一先生は、漢点字は点字であるから、点の組み合わせで漢字の形を表さなければいけない。しかし点字は、点の位置や数に制限があるので、点字で漢字の形を表すことはできなの意味と数を広げて来た。漢字はその意味で、形も大きな要素であって、その理解は重要である。そこで、漢字の形を視覚障害者にも分かるように表す方法を考案した。それが「字式」である、とおっしゃって、文字の構成要素(部首や画)の位置を表すのに、数式の符号を使って表す方法を提示されました。これを「字式」と呼びます。
 とは言いましても、川上先生の考案された「字式」とは、極めて基本的な方法で、左右の関係を「+」で、上下の関係を「/」で表すものでした。

 例: 村 木偏+寸  守 ウ冠/寸

 本会では文字に関する書籍の漢点字訳を試みて参りましたので、文字の形を表すことが求められました。そこでこの川上先生の「字式」を大幅に拡張して、漢字の構成要素(部首や画)の位置関係を「+」と「/」だけでなく、その符号を増やして使用しました。以下にご紹介します。

 ①+  「+」は、部首が横に並んだ場合の、左右の関係を表します。

 例: 村 木偏+寸  詞 言偏+司  信 人偏+言

 ②/  「/」は、部首が縦に並んだ場合の、上下の関係を表します。

 例: 守  ウ冠/寸  答 竹冠/合  奇 大/可

 ③\  「\」は、漢字のパーツとパーツを重ねることを表します。

 例:  十 一\| 中 口\| 申 日\| 春 三\人/日

④・  「・」は、パーツが縦に並んでいるとき、くっついている関係を表します。くっついているのが横線であれば、1本の横線になります。

 例: 正 一・止  亜 一・“口\∥”・一  竒 立・可

 *  “ ”は括弧です。

 ⑤>  「>」は、左側の構えの中に右側の部首を入れるか、あるいは左側の部首の右下に右側の部首を入れるかを表します。

 例: 国 囗構え>玉  間 門構え>日  街 行構え>圭  圧 厂>土  店 广>占

 ⑥<  「<」は、左側の部首を、右側の部首の左下に入れることを表します。

 例: 気 メ<气構え  式 工<弋  司 “一/口”<上かど

 ⑦÷  「÷」は、文字を上下に分けて、その間に部首を入れることを表します。

 例: 哀 衣÷口  褒 衣÷保  裏 衣÷里

 ⑧@+  「@+」は、伸ばした脚の上に部首を載せることを表します。

 例: 道 しんにょう@+首  冠 ワ冠/“元@+寸”
    魅 鬼@+未

 ⑨‐  「‐(ハイフン)」は、左右の部首や画をくっつけることを表します。

 例: 戊 垂れ‐戈  識 言偏+音‐戈

 以上の九つの符号を使って、部首や画の配置を示しています。
 次号から、字形をどのように表しているかを、具体例を挙げてご説明します。
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