このホームページの中に、この会の代表である岡田健嗣の「私の風景」という一文が載せてあります。その一部を抜粋してみます。
ここに「シン」という音があるとします。この音にどの漢字を当てるか、この「シン」という音だけを手がかりにしては決められません。なぜなら「シン」の音の漢字は、常用漢字だけでも40字以上あるからです。
また逆に、「ハカル」とか「ミル」とか「トル」と読む字も、これだけではどの字を使ってよいか分かりません。なぜなら「ハカル」や「ミル」や「トル」と読む漢字も沢山あるからです。
このように音や読みから漢字を選択するには、情況や対象の要求する文字を知っていて、的確に判断しなければなりません。そのためには、言葉、とりわけ文字に関する知識を豊富にすることと、言葉の経験、読むこと、書くこと、話すことの経験を積極的に積むことが求められます。
つまり日本語の文章は、漢字仮名交じり文であり、大量の漢語が深く入り込んでいるので、漢字の体験なしに、共通の理解の上にたつことは難しいといえます。これまでの仮名だけを表す点字では、その点が大きな問題です。
そこで次のような例があります。
かなの点字しか知らなかった人が、「てんごく」「じごく」「ごくらく」の「ごく」はみんな同じ字(国)だと思っていて、違っていることを知って口惜し涙を流したそうです。漢字を知らなければ当然でしょう。
つぎにこれは岡田氏の青春エピソード。結婚前の奥さんに、「たとえば、相=iあい)はお互いに≠ニいう意味だけど愛もあるし、哀(かな)しい≠ニいう哀=iあい)もある。といって、両人ともに愛≠もとめて、漢点字をマスターし、ゴールインしたとか…。
このように仮名点字に漢点字をプラスすることで、古典作品も含む、日本語の普通の表記=i漢字仮名交じり文)が可能になり、点字の世界を一挙にひろげます。
それに漢点字では、漢字と仮名を書き分けるので、仮名点字のような分かち書きは不要です。またコンピューターとの相性もよく、ワープロ入力の文章を、ほとんどそのままの形で点字に移行ができ、点訳図書の提供が容易になることも大きな利点です。
名古屋の「大樹会」という漢点字のボランティア団体で活躍されている平瀬 徹さんのホームページをご参照ください。分かり易く解説されているのでおすすめです。
同時にこの活動のネットワークづくりの一環として、「名古屋点訳ネットワーク」をご紹介します。