5 複合文字 (2)
2.第一基本文字と比較文字で構成される文字 (2)
前節に続けて、〈第一基本文字〉と〈比較文字〉が部首として構成される文字をご紹介します。
※「良  」を部首として含む文字四つと、「艮  」を部首として含む文字六つ。
*この二文字は墨字では、形の上で、天辺に点があるかないかの違いしかありませんが、音と意味には大きな相違があります。前者は「良  」の字義、すなわち善良で豊かでゆったりとしたという意味を、後者は、目に隈取りをするとか、がっちりとはまり込むという意味を表します。漢点字では何れも「 」で表されます。
・「良  」を部首として含む文字四つ。
(20) 朗  ロウ ほが‐らか
「良  」の右側に「月 」を置いた形の文字です。「良  」は、丸く綺麗な、粒の揃った穀物を表して、よい≠烽フを意味します。この文字は、清らかな月の光と「良  」で、明るくて曇りのない様子を表します。漢点字では、「 (月 )」と「 (良  )」で表されます。左右が反対になっています。
「朗読」「朗唱」「朗詠」「朗吟」
(21) 娘  ジョウ むすめ
「女 偏」の右側に「良  」を置いた形の文字です。「良  」は丸く粒の揃った穀物の意で、よいもの、美しいものを表しています。むすめ≠ヘ、親から見た時の女の子を指すとともに、若く美しい女性という意味にも用いられます。漢点字では、「 (女 )」と「 (良  )」で表されます。
「娘さん」「娘子」「小娘」
(22) 郎  ロウ
「良  」の右側に「おおざと」を置いた形の文字です。ロウ≠ヘ、男性の敬称として、見目麗しい男、あるいは凛々しい男の意味を表します。我が国では、「太郎、次郎」と、男性の名前に用いて、力強い男であれとの祈りを込めたり、兄弟の順位を表したりします。漢点字では、「 (良  )」と「 (おおざと)」で表されます。
「太郎さんと次郎さん」「女郎花(おみなえし)」
(23) 浪  ロウ なみ
「さんずい」の右側に「良  」を置いた形の文字です。水が穏やかに流れる、ゆったりと波が立っている様子を表す文字です。ロウ≠ヘ、ゆったりした波という意味から、その波に揺られる、足下の定まらないという意味も生まれました。江戸時代、主を失った武士、禄を食まない武士は、「浪人」と呼ばれました。現在でも、職に就けずにいる人、大学などを目指して、何処にも所属していない人を、「浪人」と呼びます。漢点字では、「 (さんずい)」と「 (良  )」で表されます。
「浪人」「浪費」「波浪」「浪曲」「浪花節(なにわぶし)」
・「艮  」を部首として含む文字六つ。
(24) 眼  ガン ゲン まなこ め
「目 偏」の右側に「艮  」を置いた形の文字です。「艮  」は、ものをしっかりとはめ込むことを表して、ここでは、骨の窪みにしっかりとはまり込んだ「目 」を意味しています。目で見ることは、ものの本質に迫ることで、そこから、ものの中心、行動の目的の意味が生じました。漢点字では、「 (目 )」と「 (艮  )」で表されます。
「眼科」「眼下」「眼球」「眼目」「開眼(かいげん)」「近眼」「三白眼」「眼をつける」「びっくり眼」
(25) 銀  ギン しろがね
「金 偏」の右側に「艮  」を置いた形の文字です。ギン≠ヘ、白く光沢のある、美しい貴金属です。しろがね≠ニは、白く輝く金属の意です。そこから、白く輝くものを、ギン≠フ語で表すようになりました。また古くギン≠ヘ、金と並んで、むしろ金より安価なことから、使い易い貨幣として流通しました。そこから、貨幣そのものを表すようになりました。漢点字では、「 (金 )」と「 (艮  )」で表されます。
「銀行」「銀貨」「銀河」「路銀」「銀縁眼鏡」「銀杏(いちょう、ぎんなん)」 |