漢点字講習用テキスト |
初級編 第2回 |
本会が実施しております「漢点字講習会」のために書き下ろしたテキストです。
これから本誌でご紹介して参ります。
*これから〈漢点字〉をご紹介しますが、従来の点字にはない点字符号が出て来ます。先ず、「(6の点)」は、「行頭下点」と呼ばれる符号です。点字符号の下の二つの点「」がない漢点字「」が行頭にあるとき、「」の符号と混同しないよう前置するものです。「 」のようになります。また、「 」で括られた点字符号は、カタカナを表します。
1 基本文字 (1)
漢数字 (1)
漢字にも数字があります。「漢数字」と呼ばれます。
漢点字では「 」の形で表されます。
「 」は、〈漢数符〉と呼ばれます。
数値は、
で表されます。ご覧の通り、点字の数字と同じ点字符号です。
また、漢数字には、桁を表す数もあります。
順に見て行きましょう。
(1) 一 イチ イツ ひと‐つ
数の1、ものの初めの意味です。
(2) 二 ニ ふた‐つ
数字の2、ふたつ、二番目の意味です。
(3) 三 サン みっ‐つ
数字の3、みっつ、三番目の意味です。
(4) 四 シ よっ‐つ
数字の4、よっつ、四番目の意味です。
(5) 五 ゴ いつ‐つ
数字の5、いつつ、五番目の意味です。
(6) 六 ロク むっ‐つ
数字の6、むっつ、六番目の意味です。
(7) 七 シチ なな‐つ
数字の7、ななつ、七番目の意味です。
(8) 八 ハチ やっ‐つ
数字の8、やっつ、八番目の意味です。
(9) 九 ク キュウ ここの‐つ
数字の9、ここのつ、九番目の意味です。
(10) 十 ジュウ とお
数字の10、とお、10の位を表します。この字は数字でもありますが、数を超えた意味を持っています。第一基本文字として後にも出て来ます。
「 を聞いてを知る」
(11) 廿 ニュウ ジュウ ニジュウ
「十」が二つの意味です。
「 日市」
(12) 百 ヒャク もも
数の百の桁に用いられます。数の多いという意味があります。
「 聞は 見に如かず」
(13) 千 セン ち
数の千の桁に用いられます。数の多い、数え切れない数の意味に用いられます。
「 夜 夜物語」「今は 船 船」
(14) 万 マン バン よろず
数の万の桁、非常に数の多い様子、あらゆるものの意味を表します。
「 に つ」「 客 来」「 朝報」
(15) 億 オク
数の億、万の一万倍、気の遠くなるほどの数の意味があります。
「 土」「中国の人口は 人」
(16) 兆 チョウ きざし きざ‐す
数の兆、天文学的な数、数えられない数の意味。また、草木の芽生え、何かこれから興る感じ、きざす、きざし。
「 候」「 前」
「 」
* 〇 ゼロ れい
これは漢数字ではありませんが、漢数字を慣用的に、算用数字のように表記するときに用います。
「電話 」
近似文字 (1)
漢数字の近似文字
上に挙げた一六個の漢数字の近似文字、五つです。
(1) 亜 ア つ‐ぐ
「一 」の近似文字です。後につづく、それに準じたの意味です。
「 細 」「 鉛」「 熱帯」
(2) 参 サン まい‐る
「三 」の近似文字です。正式の書類には、この字を三として使います。
「 加」「 詣」「日 」
(3) 丸 ガン まる‐い
「九 」の近似文字です。まるいものの意味があります。
「弾 」「日の 」「 シップ」
(4) 意 イ (こころ)
「億 」の近似文字です。億の人偏のない形です。字形は「音」の下に「心」です。
「 思」「 識」「 見を述べる」
(5) 元 ゲン ガン もと
「兆 」の近似文字です。物事のはじめの意味があります。
「 気」「 日」「 旦」「足 」
2 基本文字 (2)
1. 第一基本文字 (1)
〈第一基本文字〉とは、一マスの漢点字です。〈一マス漢点字〉とも呼ばれます。
この点字符号をカナ点字で読んだときの50音順にご紹介します。
まずは、漢点字の基本的なパターン「」から。
(1) 目 モク め
漢点字の基本的な形です。墨字は、目の形に由来しています。部首となって、目に関すること、見ることを表す文字の要素になります。
「前」「注」「覚まし時計」
(2) 糸 シ いと
細い「いと」の形に由来した文字です。紡績、織物、縫製など、いとに関わる幅広い意味を持っています。部首の「いと偏」として、多くの文字の要素となります。
「絹(きぬいと・けんし)」「口」「 乱れず」
(3) 系 ケイ つな‐ぐ つな‐がる
墨字では、「糸」の上に小さなノの字が付いた形です。つなぐ・つながるの読みと意味があります。漢点字では、〈第二糸偏〉として、二つ目の糸偏に用いられます。糸偏の文字が沢山あるからです。
「統」「図」「列会社」
(4) 比 ヒ くら‐べる
墨字では、人が二人並んだ形で、カタカナのヒを横に並べた形です。ひかくする・くらべるの意味があります。漢点字では、後で出て来る、〈比較文字〉の符号「 」として用いられます。
「較」「対」「背べ」
(5) 数 スウ かず かぞ‐える
数を数える、沢山の数の意味があります。漢点字では、漢数符「 」として用いられます。
「学」「算」「え歌」
(6) 家 カ ケ いえ や
屋根のある「いえ」です。漢点字では〈ウ冠〉として、建物に関係する意味を表します。
「屋」「族」「主」
(7) 宿 シュク やど やど‐る
人が寝起きする建物です。漢点字では〈ウ冠、ワ冠〉として用いられます。
「泊」「舎」「下」「屋」
(8) 学 ガク まな‐ぶ
屋根の下で、子供が勉強している形です。漢点字では〈ツ冠、ナベブタ〉や他の冠として用いられます。
「校」「問」「科」「舎」
(9) 言 ゲン ゴン い‐う こと
口を開いてものを言う形を表しています。部首では、〈言偏〉になって、言葉に関する意味を表します。
「明」「発」「葉」「い訳」
(10) 語 ゴ かた‐る
墨字では「言偏」に「吾」の形です。言葉を発して話をすることを表しています。漢点字では、〈第二言偏〉として、二つ目の言偏に用いられます。
「 」「日本」「英」「物」
(11) 頁 ケツ ページ
大きな頭を表しています。部首としては〈おおがい〉になります。
(12) 貝 バイ かい
海の生物のカイです。古く中国で、貨幣に子安貝の貝殻が使われていたことから、財産や交易に関わる文字に、〈貝偏〉として用いられます。カイの名前の字には〈虫偏〉が多く用いられます。
「殻」「巻き」「 枚」「子安」
近似文字 (2)
(1) 真 シン ま まこと
「目」の〈近似文字〉です。まこと、本当の、実際のの意味があります。
「 実」「写 」「 っ直ぐ」「 っ青な空」
(2) 面 メン おも も おもて つら
む‐ける
「目」の〈近似文字〉です。カオ、あるいはカオに付けるメンです。また、カオを向ける、おもて、広く平らなものの意味があります。
「表 」「 積」「水 」「 変わり」
(3) 云 ウン い‐う
「言」の近似文字です。蒸気が立ちこめている状態を象った文字です。多くの文字に、部首として含まれます。
「 」
(4) 首 シュ くび かしら
「頁」の〈近似文字〉です。アタマの形を象った字です。人のクビ、人の上に乗ったもの、人を束ねる人などの意味があります。
「 相」「元 」「 筋」「 っ玉」
(5) 具 グ つぶさ そな‐える
「貝」の〈近似文字〉です。何かをしたり作ったりするときに使うもの、何かのために、こまごまと用意するものの意味があります。
「 」「道 」「 体」「 合」
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