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漢点字講習用テキスト
初級編 第21回
    4  基本文字(3)… 比較文字

 1.対、あるいはグループをなす比較文字(1)


 ※「右」と「左」
 (6)  右   ユウ ウ  みぎ たっと‐ぶ たす‐ける
 カタカナの「ナ」の右下に「口」を置いた形の文字です。カタカナの「ナ」は、手でものを持つ形を表しています。「口」は、お祈りを容れた器で、神様に祈りを捧げるときに用いるものと言われています。つまりこの文字は、右手で神様に捧げる器を持った形を象ったものです。「みぎ」と読んで右側を表し、中国では右側を優位と考えていますので、「たっとい」の読み、また、右手を添えて「たすける」とも読みます。漢点字では、「 」で表されます。
 「右往左往」「右顧左眄」「右大臣左大臣」「右側通行」

 (7)  左   サ  ひだり たす‐ける たが‐う
 カタカナの「ナ」の右下に、「工」(このテキストでは、まだ出て来ていません。)が置かれた形の文字です。神様に祈るときに用いる道具を象ったものと言われています。神様に祈りを捧げるときに、右手に器を、左手に道具を持って行われたと考えられています。「ひだり」と読んで左側を、中国では左は劣位と考えられていました。「たすける」と読んで、手を差し伸べて人を支えることを、「たがう」と読んで、思うように行かないこと、うまく行かないことを表します。漢点字では、「 」で表されます。
 「右往左往」「右顧左眄」「左遷」「右大臣左大臣」「左側通行」
 *日本では、雛人形でも知られるように、官職としては、左大臣が上位です。つまり、左右の優劣では、左が優位です。
 古代の中国では、左側に刀剣を佩して、右手でそれを扱うことから、右側が優位、左側を劣位としていました。現在も用いられる「左遷」という言葉は、ここから来ています。
 *相撲でもお馴染みのように、中国の文化圏では、北側から南を見る形を採ります。従って、現在の地図とは反対に、左が東、右が西になります。

 ※「大きい」と「小さい」
 (8)  大   ダイ タイ タ ダ  おお おお‐きい おお‐いに
 人が大きく手を広げた形を象った文字です。「人」の縦の線に、一本の横の線を交差させた形の文字です。大きな身体、ゆったりとした姿から、「大きい、力強い、偉大な」という意味を表しています。漢点字では、「 」で表されます。点字符号の右側の部分は、第一基本文字の「犬」と似ているところから、同じ符号を用いました。
 「大学」「大規模」「大満足」「広大」「膨大」「莫大」「大雑把」「大目玉」

 (9)  小   ショウ  ちい‐さい こ お さ
 縦の線の両側に点を付した形の文字です。棒を細く削る形を象ったものと言われます。小さいもの、幼いもの、価値の低いもの、つまらないものとして用いられる文字です。そこから謙遜の意味で、自分の方を指す語として用いられます。また、「こ、お、さ」の読みを接頭語として、小さい、幼い、つまらないという意味を表します。漢点字では、「 」で表されます。
 「小学校」「小数点」「針小棒大」「小川」「小雨」「小道」「小百合」「小庭」「小利口」

 ※「出る」と「入る」
 (10)  出   シュツ スイ  で‐る だ‐す い‐でる い‐だす で
 上が開いた箱の形が立てに二つ並んでいて、真ん中を縦の線が通っている形、下には突き出ません。線を跨いで外へ出る形を象っています。「でる」と読んで、中から外へ出る、家から外へ出て働く、中央から地方へ、本社から支店へ出る、家から外へ出て嫁に行く、ぬきんでる、世に出る、生まれた土地や出身校をも表します。「だす」と読んで、嫁を離縁する。また、「すい」の音で、金銭の出金を意味します。漢点字では、「 」で表されます。
 「出勤」「出金」「出社」「出発」「出港」「出品」「出店」「外出」「退出」「出処進退」「出口」「出物」「家出」

 (11)  入   ニュウ ジュウ  い‐る は‐いる い‐れる
 入り口が開いた形を象っていると言われます。外から中へ入る、嫁として家の中へ入る、中央の官庁に入るといういみがあります。漢点字では、「 」で表されます。「人」に似ているので、右側の点字符号に同じものを用いました。
 「入金」「入学」「入社」「入門」「入力」「入港」「入出」「収入」「歳入」「投入」「出入り」「入り婿」「入り鉄砲に出女」
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