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漢点字講習用テキスト
初級編 第27回
    4  基本文字(3)… 比較文字

 比較文字の近似文字
    5  複合文字(2)
 1.第一基本文字と比較文字で構成される文字(1)

 本章では、これまでに出て来た基本文字、〈第一基本文字〉と〈比較文字〉が部首として構成される文字をご紹介します。

 ※「中 」を部首として含む文字三つ。
 (1)  仲   チュウ  なか
 「人偏」の右側に「中 」を置いた形の文字です。本来の意味は、兄弟の真ん中の男子、あるいは一年を四等分する季節の真ん中の月の意味を表す文字です。そこから真ん中という意味が生じました。さらに、人と人との間を取り持つ人、仲立ち、人の内輪な関係、仲間の意味に用いられます。漢点字では、「(人偏)」と「(中)」で表されます。
 「仲人(なこうど)」「仲間(なかま)」「仲介(ちゅうかい)」「仲秋の名月」

 (2)  沖   チュウ  おき
 「さんずい」の右側に「中 」を置いた形の文字です。おき≠ニ読んで、海の岸からずっと離れたところ、見晴るかす何もない海原を意味する文字です。漢点字では、「(さんずい)」と「(中)」で表されます。
 「沖縄」「沖合い」「沖の白波」「房総沖」「三陸沖」

 (3)  忠   チュウ
 「中 」の下に「心」を置いた形の文字です。真心を持って、誠実を尽くしてという意味を表します。「君に忠、親に孝」、つまり忠誠心を表す文字です。人名に用いられる場合は、ただ≠ニ読みます。漢点字では、「(中)」と「(心)」で表されます。
 「忠義心」「忠誠心」「忠君愛国」「忠臣蔵」

 ※「右 」を部首として含む文字一つ。
 (4)  若   ジャク ニャク ニャ  わか‐い も‐し も‐しくは
 「草冠」の下に「右 」を置いた形の文字です。元は、若いしなやかな女性の身体を象った文字でしたが、毛髪の形が草冠になり、その下が右の形に変わりました。わかい≠ニ読んで、柔らかい、しなやかな身体、そのような人を表します。またそこから、数が少ないという意味も生まれました。もし、もしくは≠フ読みは、現在はほとんど使われませんが、漢文の訓読に由来するもので、昭和の初期以前の書物には、普通に用いられています。漢文訓読に由来する読みには、他に、その、なんじ、しかり、いかん、したがう、ごとし、かくのごとき%凾ェあります。また、仏教でいう「般若(はんにゃ)」とは、悟りの一つのことです。漢点字では、「(草冠)」と「(右)」で表されます。
 「若年」「若輩」「若干」「老若男女(ろうにゃくなんにょ)」「般若心経」「若水」「牛若丸」「若大将」「若者」

 ※「左 」を部首として含む文字一つ。
 (5)  佐   サ  たす‐ける すけ
 「人偏」の右側に「左 」を置いた形の文字です。脇から手を差し伸べて助ける、側にいて手助けするという意味を表します。すけ≠フ読みは、平安時代の官位の名称に見られます。さ≠フ読みは、軍隊の上級将校の位に用いられます。またさ≠ヘ、人の名に多く見られます。漢点字では、「(人偏)」と「(左)」で表されます。
 「佐藤さん」「佐々木さん」「佐渡島」「補佐」「勤皇佐幕」

 ※「大 」を部首として含む文字六つ。
 (6)  器   キ  うつわ
 「大 」の上と下に「口」を二つずつ横に並べて置いた形の文字です。「大 」は、元は「犬」で、犬の意味が薄れた末に、大の形になりました。「犬」は昔、聖なる動物で、神様に犠牲として捧げられたもので、この「器 」は、その犬の肉を容器に入れて神様に捧げる形を表しています。下って、「食器、容器」等、ものを入れるもの、「器量、器用」等、人間の性格や大きさ、「消化器、呼吸器」等、身体の働きをする器官、その他多くの道具の意味を表しています。漢点字では、「(大)」と「(口)」で表されます。
 「器量」「器用」「器具」「器機」「食器」「容器」「呼吸器」「消化器」「点字器」
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