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漢点字の散歩(21)
                    
岡田 健嗣
 漢点字紹介(4)
    4. 漢点字のご紹介

 @ 第1基本文字(1マス漢点字)(承前)
 前号に引き続き、1マスの漢点字をご紹介します。
 漢点字符号をかな読みした場合の、50音に従ってご紹介します。

    カ行
 カ 
 (12)  金  キン コン  かね
 「」は、「金」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、金の入った文字を構成します。「金」は、金属の名前や金属製品を表します。
 例:  銀  銅  鉄  針 

 キ 
 (13)  木  ボク モク  き こ
 「」は、「木」を表す漢点字符号です。「」や」」の形で、多くの文字に含まれます。
 例:  林  森  相  想 

 ク 
 (14)  草  ソウ  くさ
 「」は、「草」を表す漢点字符号です。「」は、草冠として多くの文字に含まれます。
 例:  菜  薄  荷 

 * 「木」と「草」は、木偏・草冠として用いられますが、木偏は樹木の名前と木製品や木にまつわる文字を形成します。草冠も同様に、草の名前と草を原料にした製品や草にまつわる文字、あるいはその他から派生した文字を形成します。漢点字では、樹木の名・草の名は、原則として一括した漢点字符号を使用することにしました。従ってこの「」の漢点字符号は、原則として樹木や草の名前には用いられません。

 ケ 
 (15)  犬  ケン  いぬ
 「」は、「犬」を表す漢点字符号です。「」の漢点字符号は、獣偏として、多くの文字に含まれます。また「」の形で、「犬」の含まれる文字を形成します。
 例:  狭  狂  独  献  状 

 コ 
 (16)  子  シ  こ
 「」は、「子」を表す漢点字符号です。「」、「」の形で、「子」を含む文字を構成します。
 例:  季  享  好 

    サ行
 サ 
 (17)  都  ト ツ  みやこ
 「」は、「都」を表す漢点字符号です。「都」の文字には「おおざと」が含まれています。そこで漢点字では原則として、「」の形で「こざと」を、「」の形で「おおざと」を表します。
 例:  阿  院  限  郡  部 

 シ 
 (18)  市  シ  いち
 「」は、「市」を表す漢点字符号です。「市」を含む文字に用いられるとともに、なべぶたをとれば「巾」になりますので、「巾」の含まれる文字にも用いられます。
 例:  姉  肺  帳  布 

 * 「巾」を単独に用いる場合は、「 」の漢点字符号が当てられます。「布巾」は「 」、「頭巾」は「 」となります。

 ス 
 (19)  発  ハツ ホツ  はなつ たつ
 「」は、「発」を表す漢点字符号です。「」の漢点字符号は、「癶(はつがしら)」を表します。また「」で、「発」を含む文字を表します。
 例:  登 

 セ 
 (20)  食  ショク ジキ  たべる くう
 「」は、「食」を表す漢点字符号です。「」の形で、「食偏」を表します。
 例:  飲  館  飯 

 * 「食」には「良」の文字の形が含まれますが、漢点字では「食」と「良」とは別字と捉えます。

 ソ 
 (21)  馬  バ  うま ま め
 「」は、「馬」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「馬」を含む文字を表します。
 例:  駅  驚  験 

    タ行
 タ 
 (22)  田  デン  た
 「」は、「田」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「田」の文字を含む文字を表します。
 例:  男  町  畑  胃  細 

 * 「田」は耕作地を象形化した文字ですが、「細、思、胃」などの「田」は耕作地に由来してはいません。しかし、漢点字ではその形を取って、「」で表しました。

 チ 
 (23)  竹  チク  たけ
 「」は、「竹」を表す漢点字符号です。「」の形で、「竹冠」を表します。
 例:  管  筋  箱 

 * 「竹冠」のつく文字は、多く竹製品を表しますが、「笹、篠」のように竹の名前を表す文字もあります。漢点字では先にご紹介した「木、草」と同様に、後にご紹介する植物の名前を表す符号が用いられます。

 ツ 
 (24)  土  ド  つち
 「」は、「土」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「土」を含む文字を表します。
 例:  域  地  社 

 テ 
 (25)  手  シュ  て
 「」は、「手」を表す漢点字符号です。「」の形で「手偏」の文字を、「」の形でその他の「手」を含む文字を表します。
 例:  持  批  抱  挙 

 ト 
 (26)  戸  コ  と
 「」は、「戸」を表す漢点字符号です。「」の形で「戸冠」を含む文字を表します。
 例:  所  戻  扇 

    ナ行
 ナ  
 (27)  人  ジン ニン  ひと
 「」は、「人」を表す漢点字符号です。「」の形で、「人偏」を含む文字を表します。また「」の形で、他の「人」の形を含む文字を表します。
 例:  仰  僕  価  値  臥 

 * 「来」は、旧字の「來」の文字の中に「人」の形が含まれているところから、「 」の漢点字符号となりました。ただしこの「人」の形は、「ひと」を意味してはいません。実って穂を垂れた穀物(麦)を象ったものです。

 (28)  仁  ジン
 「」は、「仁」を表す漢点字符号です。「」の形で、二つ目の「人偏」を表します。
 例:  作  使  任 

 * 「人偏」を含む文字は数多くあります。そこで漢点字では「糸偏、言偏」と同様に、二つの符号を用意しました。「」を「第一人偏」、「」を「第二人偏」と呼びます。

 ニ  
 (29)  水  スイ  みず
 「」は、「水」を表す漢点字符号です。「」の形で、「さんずい」を表します。また、「」の形で、「水」の文字を含む文字を表します。
 例:  河  池  海 

 (30)  氷  ヒョウ  こおり  こおる ひ
 「」は、「氷」を表す漢点字符号です。「」の漢点字符号は、二つ目の「さんずい」として用いられるとともに、「にすい」としても用いられます。また「」の漢点字符号は、「氷」や「にすい」を含んだ文字を表します。
 例:  汗  漏  滑  次  凍 

 * 「冫(にすい)」は、「氷」に由来する部首です。これを含む文字は比較的少ないことと、「さんずい」を含む文字が大変多いことから、「」を「にすい」と二つ目の「さんずい」の符号として用います。そこで「」を「第一さんずい」、「」を「第二さんずい」あるいは「にすい」と呼びます。従って漢点字からは「」の符号が、「にすい」であるか「さんずい」であるかを判断することはできません。

 ヌ 
 (31)  力  リョク リキ  ちから
 「」は、「力」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「力」を含む文字を表します。
 例:  協  男  勉 

 ネ 
 (32)  示  シ ジ  しめす
 「」は、「示」を表す漢点字符号です。「」の形で「示偏」を表します。また「」の形で、「示」を含む文字を表します。
 例:  神  社  礼  宗 

 * 「示偏」によく似た形の部首に「衣偏」があります。後述の通り、漢点字ではこれも「」で表します。

 ノ 
 (33)  私  シ  わたくし
 「」は、「私」を表す漢点字符号です。「」の形で、「ノ木偏」や「ノ木」が上にある文字を表します。また「」の形で、「ノ木」を含む文字を表します。
 例:  科  種  秋  委  季 

    ハ行
 ハ 
 (34)  走  ソウ  はしる
 「」は、「走」を表す漢点字符号です。「」の形で、「走にょう」を表します。また「」の形で、「走」を含む文字を表します。
 例:  趣  赴  超  越 

 ヒ  
 (35)  進  シン  すすむ
 「」は、「進」を表す漢点字符号です。「」の形で、「しんにょう」を表します。
 例:  道  送  迎  連  点 

 (36) 火  カ  ひ
 「」は、「火」を表す漢点字符号です。「」の形で、「火偏」を表します。また「」の形で、「火」を含む文字を表します。また「」は、連火または列火(4つ点)を表します。連火は、火を燃やして煮炊きする形を表して、「火」に由来する部首です。
 例:  煙  焼  灯  炎  秋  燃  点 

 フ 
 (37)  女  ジョ ニョ  おんな
 「」は、「女」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「女」を含む文字を表します。
 例:  姉 
 ヘ 
 (38)  玉  ギョク  たま
 「」は、「玉」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「玉」を含む文字を表します。「玉」は部首となるとき、しばしば「王」の形に変化します。
 例:  国  璽  宝  現  珠 

 ホ 
 (39)  方  ホウ  かた
 「」は、「方」を表す漢点字符号です。「」の形で「方偏」を、「」の形で「方」を含む文字を表します。
 例:  旗  施  放  訪 

    マ行
 マ 
 (40)  石  セキ シャク  いし
 「」は、「石」を表す漢点字符号です。「」の形で「石偏」を、「」の形で「石」を含む文字を表します。
 例:  研  硬  磁  硝 

 ミ 
 (41)  耳  ジ  みみ
 「」は、「耳」を表す漢点字符号です。「」の形で「耳偏」を、「」の形で「耳」を含む文字を表します。
 例:  取  職  聖  聴  聞 

 ム 
 (42)  車   シャ  くるま
 「」は、「車」を表す漢点字符号です。「」で「車偏」を、「」で「車」を含む文字を表します。
 例:  軽  転  軟  軍  庫 

 メ 
 (43)  目  モク  め
 「」は、「目」を表す漢点字符号です。「」の形で「目偏」を、「」の形で「目」を含む文字を表します。
 例:  眼  睦  相 

 * 漢点字では「目」に由来しない文字の中に「目」の形が含まれる場合にも、「」の形を用います。
 例:  県  真  直 

 モ 
 (44)  門  モン  かど
 「」は、「門」を表す漢点字符号です。「」の形で「門構え」を表します。
 例:  開  閉  閑  関  間 

    ヤ行
 ヤ 
 (45)  病  ビョウ ヘイ  やまい やむ
 「」は、「病」を表す漢点字符号です。「」の形で「病垂れ」を表します。
 例:  痛  疲  癖  痢 

 ユ 
 (46)  行  ギョウ コウ  ゆく おこなう
 「」は、「行」を表す漢点字符号です。「」の形で、「行人偏」と「行構え」を表します。
 例:  後  得  律  街  衡 

 ヨ 
 (47)  店  テン  みせ
 「」は、「店」を表す漢点字符号です。「」の形で「麻垂れ」を表します。
 例:  庫  広  庶  席 

    ラ行
 ラ  
 (48)  月  ゲツ ガツ  つき
 「」は、「月」を表す漢点字符号です。「」の形で「月偏」を、「」の形で「月」を含む文字を表します。
 例:  能  服  朋  期 

 (49)  肉  ニク  しし
 「」は、「肉」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「肉月」を表します。
 例:  肝  脚  脳  胃  筋 

 * 部首の「月」の形は、天体の「月」と「肉」に由来しますが、「舟」に由来する「月」も沢山あります。しかも天体の「月」、「肉月」、「舟」に由来する「月」の区別は、必ずしも判然としません。漢点字では原則として「」で「月」と「舟」に由来する「月」を、「」で「肉月」を表します。しかし「 (有)」と「 (朝)」は漢点字符号の「月」と「肉月」が反対になっています。漢点字の創作時にこのようになりましたが、既に長年の膾炙によるものとご了解下さい。同様の異同は他にも見られます。

 リ  
 (50)  分  ブン フン  わける わかつ
 「」は、「分」を表す漢点字符号です。「分」の文字は、「八」と「刀」でできていますが、「」は「分」の文字全体を表します。「」の形で「八頭」や三角屋根の形を表します。また「」や「」の形は、「分」を含む文字も表します。
 例:  会  舎  全  貧  粉 

 (51)  日  ジツ ニチ  ひ
 「」は、「日」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「日」を含む文字を表します。また「曰(エツ)」を含む文字も表します。
 例:  映  晶  曜  是  間 

 ル  
 (52)  性  セイ ショウ  さが
 「」は、「性」を表す漢点字符号です。「」の形で「立心偏」を表します。また「」の形で、「下心」を表します。
 例:  悦  情  悩  恭  添 

 (53)  心  シン  こころ
 「」は、「心」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「心」を含む文字を表します。
 例:  恐  感  思 

 レ  
 (54)  口  コウ ク  くち
 「」は、「口」を表す漢点字符号です。「」の形で、「口偏」を、「」の形で、「口」を含む文字を表します。
 例:  兄  咲  史  呈  加 

 (55)   囲  イ  かこむ
 「」は、「囲」を表す漢点字符号です。「」の形で「国構え」を表します。
 例:  困  因  団  国 

 ロ  
 (56)  十  ジュウ  とお
 「」は、漢数字の「十」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「十」を含む文字を表します。
 例:  友  布  直  有  計 

 * 漢点字では、「布、友、有」の上の部分、カタカナの「ナ」に似た形の部分を、「(十)」で表すことにしました。

 (57)  止  シ  とめる とまる やむ
 「」は、「止」を表す漢点字符号です。「」や「」の形で、「止」を含む文字を表します。
 例:  歩  歯  肯  祉 

 以上、漢点字の最も基本的な文字、1マスで表す第1基本文字・57字をご紹介しました。
 次回からは、この第1基本文字で構成された文字と、2マスで表す基本文字をご紹介します。
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