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漢点字の散歩(25)
                    
岡田 健嗣
 漢点字紹介(8)
    4. 漢点字のご紹介

 D 複合文字(2)
    比較文字と発音文字を含む複合文字
 ここでは、第一基本文字・漢数字と、比較文字・発音文字で構成される文字をご紹介します。

 (1)   仲  チュウ  なか
    人偏 + 中
 人偏の右側に中が置かれた文字です。人と人をつなぐ、仲立ちをするという意味があります。漢点字では「」で人偏を、「」で中を表します。
 熟語:  (仲人)  (仲間)

 (2)   忠  チュウ
    中 / 心
 中の下に心が置かれた文字です。「まごころ、ただしい」という意味を表します。漢点字では、「」で中を、「」で心を表します。
 熟語:  孝(忠孝)  臣蔵(忠臣蔵)

 (3)   若  ジャク ニャク  わかい
    草冠 / 右
 草冠の下に右が置かれた文字です。「わかい」と訓読しますが、漢文訓読では「もしも、もしくは、ごとし」と読みます。漢点字では、「」で草冠を、「」で右を表します。
 熟語:  干(若干)  菜(若菜)

 (4)   佐  サ
    人偏 + 左
 人偏の右側に左が置かれた文字です。「たすける」という意味があります。漢点字では、「」で人偏を、「」で左を表します。第二人偏を採用しました。
 熟語: 補 (補佐)

 (5)   器  キ  うつわ
    “口+口” / 大 / “口+口”
 大の上下四隅に口が配された文字です。物を入れる「うつわ」を表します。漢点字では、「」で大を、「」で口を表します。四つの口を、一つで表しています。
 熟語:  (食器)  (花器)

 (6)   因  イン  よる
    囗(国構え) > 大
 国構えの中に大が置かれた文字です。人が寝具の上に、ゆったりと身を伸ばして休んでいる様子を表します。漢点字では、「」で国構えを、「」で大を表します。
 熟語: 原 (原因)  果(因果)

 (7)   恩  オン
    因 / 心
 因の下に心が置かれた文字です。大事にされる、慈しむことを表します。漢点字では、「」で因を、「」で心を表します。
 熟語:  恵(恩恵) 厚 (厚恩)

 (8)   毎  マイ  ごと
    ノ一 / 母
 頭の毛を結った女性を象った文字です。主婦が日常の仕事をこなしている様子を表します。漢点字では、「」でノ一を、「」で母を表します。
 熟語:  (毎日)  朝(毎朝)

 (9)   海  カイ  うみ
    さんずい + 毎
 さんずいの右側に毎を置いた形の文字です。「うみ」を表します。漢点字では、「」でさんずいを、「」で毎をを表します。
 熟語:  (日本海)

 (10)   底  テイ  そこ
    广(まだれ) > “氏/一”
 广(まだれ)の中に低の旁である氏と一が置かれた文字です。物の最も下のところを意味します。漢点字では「」で广を、「」で低の旁を表します。
 熟語:  (底力)  (海底)

 (11)   込  こむ
    しんにょう + 入
 しんにょうの右側に入が置かれた文字です。建物などの中に入り込むことを意味します。わが国で作られた国字です。漢点字では、「」でしんにょうを、「」で入を表します。

 (12)   浪  ロウ  なみ
    さんずい + 良
 さんずいの右側に良が置かれた文字です。水面をゆったりと動く波を表します。漢点字では、「」でさんずいを、「」で良を表します。
 熟語:  (浪人) 波 (波浪)

 (13)   郎  ロウ  おとこ
    良 + おおざと
 良の右側におおざとが置かれた文字です。男性を意味します。漢点字では、「」で良を、「」でおおざとを表します。
 熟語:  (太郎)

 (14)   河  カ  かわ
    さんずい + 可
 さんずいの右側に可が置かれた文字です。大きな流れを意味します。中国では、黄河を指します。漢点字では、「」でさんずいを、「」で可を表します。
 熟語:  (河口)  川(河川)

 (15)   奇  キ  くしくも
    大 / 可
 大の下に可が置かれた文字です。「めずらしい、あやしい」という意味を表します。漢点字では、「」で大を、「」で可を表します。
 熟語:  怪(奇怪)  抜(奇抜)

 (16)   寄  キ  よる よせる
    ウ冠 / 奇
 ウ冠の下に奇が置かれた文字です。「たよる、よりかかる」という意味を表します。漢点字では、「」でウ冠を、「」で奇を表します。
 熟語:  附(寄附)  (寄宿)

 (17)   凍  トウ  こおる
    冫(にすい) + 東
 冫(にすい)の右側に東が置かれた文字です。水が凍って固まることを表します。漢点字では、「」で冫(にすい)を、「」で東を表します。
 熟語:  (凍土)  結(凍結)

 (18)   練  レン  ねる
    糸偏 + 東
 糸偏の右側に東が置かれた文字です。繭から取った糸を撚り合わせて、丈夫で美しい絹糸を作ることを意味します。漢点字では、「」で糸偏を、「」で東を表します。
 熟語:  習(練習)  り絹(練り絹)

 (19)  価  カ  あたい
    人偏 + 西(西に似た形)
 人偏の右側に西に似た形が置かれた文字です。右側の旁は商人を表して、物の価値を決めることを意味します。漢点字では、「」で人偏を、「」で西に似た形を表します。
 熟語:  値(価値) 評 (評価)

 (20)   要  ヨウ  いる かなめ
    西(西に似た形) / 女
 西に似た形の下に女が置かれた文字です。西に似た形は、人の腰の形を象っています。腰は首とともに、人の身体の大切な部分です。そこでこの文字は、「かなめ」という意味を表します。漢点字では、「」で西に似た形を、「」で女を表します。
 熟語:  (要点)  (必要)

 (21)   献  ケン  たてまつる
    南 + 犬
 南の右側に犬が置かれた文字です。神に供え物を供えることを表します。漢点字では、「」で南を、「」で犬を表します。
 熟語:  (献金)  血(献血)

 (22)   背  ハイ  せ そむく
    北 / 肉月
 北の下に月(肉)が置かれた文字です。北に「せ、そむく」の意味があります。身体の部分を表す肉月が加えられて、人の背を意味する文字となりました。漢点字では、「」で肉月を、「」で北を表します。
 熟語:  面(背面)  丈(背丈)

 (23)   討  トウ  うつ
    言偏 + 寸
 言偏の右側に寸が置かれた文字です。敵を討ち滅ぼすことを意味します。また言葉を戦わせること、論戦を挑むことを表します。漢点字では、「」で言偏を、「」で寸を表します。
 熟語:  伐(討伐)  論(討論)

 (24)   寺  ジ  てら
    土 / 寸
 土の下に寸が置かれた文字です。仏教の「てら」を意味します。漢点字では、「」で土を、「」で寸を表します。
 熟語:  (東大寺)

 (25)   持  ジ  もつ
    手偏 + 寺
 手偏の右側に寺が置かれた文字です。「もっている、もちつづける」という意味を表します。漢点字では、「」で手偏を、「」で寺を表します。
 熟語:  続(持続)  (持久力)

 (26)   詩  シ  うた
    言偏 + 寺
 言偏の右側に寺が置かれた文字です。漢詩を指す文字です。現代では散文に対して韻律に沿った文、詩歌全般を指して用いられます。漢点字では、「」で言偏を、「」で寺を表します。「 討」と区別するために、第二言偏を採用しました。
 熟語:  歌(詩歌) 新 (新体詩)

 (27)   駅  エキ  うまや
    馬偏 + 尺
 馬偏の右側に尺が置かれた文字です。街道沿いに馬を取り替えるために設けられた施設です。現在では鉄道の停車場を指します。漢点字では、「」で馬偏を、「」で尺を表します。
 熟語:  伝(駅伝)  (駅馬車)

 (28)   沢  タク  さわ
    さんずい + 尺
 さんずいの右側に尺が置かれた文字です。水の潤いを意味します。漢点字では、「」で尺を、「」でさんずいを表します。左右が逆になっています。
 熟語:  山(沢山) 光 (光沢)

 (29)   祈  キ  いのる
    ネ(示)偏 + 斤
 示偏の右側に斤が置かれた文字です。神に祈りを捧げることを意味します。漢点字では、「」で示偏を、「」で斤を表します。
 熟語:  願(祈願)  祷(祈祷)

 (30)   近  キン  ちかい
    しんにょう + 斤
 しんにょうの右側に斤が置かれた文字です。距離が近いこと、関係が近いことを表します。「」でしんにょうを、「」で斤を表します。
 熟語:  距離(近距離)  親者(近親者)

 (31)   慣  カン  なれる
    立心偏 + 貫
 立心偏の右側に貫が置かれた文字です。何度も繰り返して、慣れることを意味します。漢点字では、「」で立心偏を、「」で貫を表します。
 熟語: 習 (習慣)  用句(慣用句)

 (32)   約  ヤク
    糸偏 + 勺
 糸偏の右側に勺が置かれた文字です。「むすぶ、おおよそ」の意味を表します。漢点字では、「」で糸偏を、「」で勺を表します。
 熟語:  束(約束) 条 (条約)

 (33)   昇  ショウ  のぼる
    日 / 升
 日の下に升が置かれた文字です。日が昇ることを意味しますが、現在では昇降機のように、上へ上がること一般に用いられます。漢点字では、「」で日を、「」で升を表します。
 熟語:  (上昇)  降(昇降)

 (34)   科  カ  しな とが
    禾(ノ木)偏 + 斗
 禾偏の右側に斗が置かれた文字です。穀物を選り分けたり量を量ったり、品定めすることを意味します。漢点字では、「」で禾を、「」で斗を表します。
 熟語:  (科学)  (学科)

 (35)   関  カン  せき かかわる
    門構え > ソ・天
 ソ・天の形は、かんぬきで戸を閉ざす形を象っていて、この文字は門を固く閉ざすことを表します。関わり合うこと、あるいは要所にある関所を意味します。漢点字では、「」で門構えを、「」でソ・天を表します。
 熟語:  係(関係)  節(関節)

 (36)   規  キ
    夫 + 見
 夫の右側に見が置かれた文字です。この文字の夫は、円を描く道具であるぶんまわし(コンパス)の象形で、この文字は、道具を使って円を描くことを表します。漢点字では、「」で夫を、「」で見を表します。
 熟語:  則(規則) 定 (定規)

 (37)   紙  シ  かみ
    糸偏 + 氏
 糸偏の右側に氏が置かれた文字です。「かみ」を意味する文字です。紙は、八世紀にアラビアに伝わり、アラビアからヨーロッパに伝わりました。漢点字では、「」で糸偏を、「」で氏を表します。
 熟語:  幣(紙幣) 新 (新聞紙)

 (38)   眼  ガン  まなこ め
    目偏 + 艮(コン)
 目偏の右側に良の近似文字である艮が置かれた文字です。じっと見詰める目を意味します。漢点字では、「」で目を、「」で艮を表します。
 熟語:  (眼下)  (眼科)

 (39)   限  ゲン  かぎり かぎる
    こざと偏 + 艮(コン)
 こざと偏の右側に良の近似文字である艮が置かれた文字です。神域を守る様子を表します。神の領域と人の住む所を区切ることを意味しています。漢点字では、「」でこざと偏を、「」で艮を表します。
 熟語:  界(限界) 制 (制限)

 (40)   兵  ヘイ  つわもの
    丘・八
 丘の下に八の形が置かれた文字です。上は丘ではなく斤(おの)の形で、人が斤(武器)を手に持って掲げているところを象っています。兵士や武器を意味します。漢点字では、「」で丘を、「」で八を表します。
 熟語:  士(兵士)  (兵器)

 (41)   魅  ミ
    鬼 + 未
 鬼の右側に未が置かれた文字です。もののけやすだまを意味して、人を惑わしたり傷つけたりすると恐れられました。漢点字では、「」で鬼を、「」で未を表します。
 熟語:  (魅力)  惑(魅惑)

 (42)   坂  ハン  さか
    土偏 + 反
 土偏の右側に反が置かれた文字です。反は、崖をよじ登る形を象っていますが、この文字は、上り下りする坂道を意味します。漢点字では、「」で土偏を、「」で反を表します。
 熟語: 急 (急坂)  道(坂道)

 (43)   阪  ハン  さか
    こざと偏 + 反
 こざと偏の右側に反が置かれた文字です。先の「 坂」の異体字です。漢点字では、「」でこざと偏を、「」で反を表します。
 熟語:  (大阪市)

 (44)   飯  ハン  めし いい
    食偏 + 反
 食偏の右側に反が置かれた文字です。元は食べることを意味しましたが、現在では主食の米飯を意味します。漢点字では、「」で食偏を、「」で反を表します。
 熟語: 米 (米飯)  盒(飯盒)

 (45)   眠  ミン  ねむる
    目偏 + 民
 目偏の右側に民が置かれた文字です。床に就いて眠ることを意味します。漢点字では、「」で目偏を、「」で民を表します。
 熟語:  (安眠) 睡 (睡眠)
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