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点字から識字までの距離(111) 通所支援事業所へのサービス(1) 山 内 薫 |
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1、通所支援事業所とは 通所支援事業所は障害児(18歳未満)への支援を強化するために、それまで施設系は児童福祉法、事業系は障害者自立支援法という二本立てで行われてきた障害児への施策を、平成24年4月1日から児童福祉法に根拠規定を一本化し、障害児施設を一元化するためにできた事業所である。18歳以上については障害者自立支援法に基づく障害者施策により対応することとなった。この法改正の基本的な考え方は「身近な地域で支援が受けられるよう、どの障害にも対応できるようにするとともに、引き続き、障害特性に応じた専門的な支援が提供されるよう質の確保を図る。」と説明されている。(障害児支援の強化について-厚生労働省) 障害児通所支援とは、児童発達支援、医療型児童発達支援、放課後等デイサービス、保育所等訪問支援を指すが、多くの事業所では、就学している障害児に、授業の終了後または休業日に、生活能力の向上のために必要な訓練等を行う「放課後等デイサービス」と、未就学の障害児に、日常生活における基本的な動作の指導、集団生活への適応訓練等を行う「児童発達支援」の両方、または一方の事業を行っている。 放課後等デイサービスは2012年度に2,540カ所だった事業所が2016年度には8,352カ所に急増しており(日本経済新聞2017年1月7日)、今後も増えることが予想される。(2019年9月6日現在、13,568カ所、221,221人が利用) 放課後等デイサービスを実施している事業所の内、重度の障害児を対象としている事業所はわずかしかなく、重症心身障害児向けの事業所を「厚生労働省は2020年末までに、すべての市区町村に少なくとも1カ所以上設置する目標を掲げる方針を決めた。(中略)昨年5月時点で重症心身障害児を受け入れている児童発達支援事業所は248カ所、放課後等デイサービス事業所は354カ所ある。全市区町村にそれぞれ一カ所以上設置して、全自治体数にあたる1700カ所以上にするという目標だ。」(朝日新聞2017年2月23日朝刊)という。(医療的ケアを必要としている重症心身障害児が平成27年現在17,078人いる) 墨田区には、児童福祉法に基づく通所支援事業所が平成30年8月現在25カ所ある。このうち児童発達支援を行う事業所が12事業所、放課後等デイサービスを行う事業所が22事業所で2つを兼ねている事業所がほとんどのため総事業所数は25カ所になる。(墨田区児童発達支援・放課後等デイサービス事業所ガイドブック 平成30年8月版) 2、児童通所支援事業所連絡会でのPR 図書館と通所支援事業所との係わりはNPO法人CANVASとのコラボレーションで障害児を対象としたワークショップを開催することになり、その企画の呼びかけを行うために、区内の児童通所支援事業所連絡会に参加したことによる。CANVASは2002年に設立され「デジタル時代の子どもたちの創造力・表現力を育む」ことを目的に、創造的な学びの場を産官学連携で提供しているNPOで、全国各地で子どもを対象とした様々なワークショップを展開している。 そのCANVASからひきふね図書館に簡単なプログラミング教室の提案があり、一般の子ども向けの「ひきふね図書館チャレンジワークショップ-デジタルテクノロジーであそぼう!」(2016年6月18日)と、「障がいのあるお子さんとそのご家族を対象に、タブレットでアニメーションを作るワークショップ」(2016年10月29日)の2つが開催されることになり、そのPRのために児童通所支援事業所連絡会に参加させて頂いた。 会場では、伊藤忠財団から頂いたマルチメディアDAISY図書のわいわい文庫の原本の表紙が印刷されたポスター3年分のコピー、日本障害者リハビリテーション協会発行の『デイジー活用事例集』(二〇一三年)、そして図書館の案内を封筒に入れて配布した。マルチメディアDAISY図書を収納したiPadを持参して会場の皆さんに実物も見ていただいた。 当日は12の事業所からの参加があり、新しい事業所も2カ所参加していた。はじめにそれぞれの事業所の近況報告があったが、多くの施設が親からの要望などで外出したことを報告していた。公園や美術館・水族館に行ったり、ある事業所は「すみだトリフォニーホールのコンサートに参加した。北千住の公園に行ったり、イギリスで社会福祉を勉強している海外留学生と活動し、イギリスの手遊び歌などをやった。」という。「鉛筆が持てなかった子どもが持てるようになった。」「ハロウィンにはそれぞれ勝手に仮装してきてもらった」などの報告があった。共通の課題として「ノロウィルス、インフルエンザ、結核などに対する対処法」、「特別支援学校に車で子どもを迎えに行く際の駐車場の問題」などが話し合われていた。 図書館のPRについて、いくつかの事業所の方がマルチメディアDAISY図書に興味を示して下さったが、特に興味を示してくれたのは「キッズサポートりま」という事業所の方だった。参加していたSさんは実は何年か前に区内の図書館に勤務していた方で、中途退職した後に請われて「りま」の所長になった方だった。図書館の事情に明るいこともあり是非来て子どもたちにマルチメディアDAISYを見せて欲しいと要望された。この「キッズサポートりま」は区内の放課後等デイサービスを実施している事業所のなかで、当時唯一重症心身障害児を対象としている施設で墨東養護学校の在校生を対象としている。 3、墨田こどもの家・墨田えがおの家の訪問 この連絡会がきっかけで2つの事業所を見学することになった。はじめに訪問した「墨田こどもの家・墨田えがおの家」は、NPO法人スマイル・アーチが運営する放課後等デイサービス事業所で、「墨田こどもの家」は小学生を、「墨田えがおの家」は中学生を対象としている。(現在は中高校生を対象にした「墨田あゆみの家」という名称になっている)子どもたちの利用時間は、月曜日から金曜日までは13時から18時まで、土曜日は8時から16時半までで18時までの延長ができる。事業所からのひと言には次のように記されている。「事業所内や公園で遊んだり、おやつや宿題、ドライブをしながら、人との関わり方やルール等を学んでいます。また、年に3回2泊3日の合宿や年末のお楽しみ会など年間行事を通していろいろなことを体験しています。」 当日(2016年2月24日)は私とひきふね図書館の障害者サービス担当者Oさん、そしてもうひとり筑波大学の大学院に在籍して公立図書館の障害者サービスについて研究しているKさんの三人で訪問した。Kさんは大阪の枚方市立図書館に30年近く勤務した後、退職して筑波大学で学んでいる。修士学位論文執筆に当たってひきふね図書館にもインタビューに来てくださったことから、お声かけし、同行することになった。 ひきふね図書館から自転車で15分ほどの「墨田こどもの家」は、ビルの一階を使用している。15時20分に到着すると小学生7人(男児6人、女児1人)とスタッフ4人が在室していた。入り口近くに広間があったので、そこに低いテーブル2台を重ねて簡易舞台を設置し、お話会を開始した。出し物は次の通り。 (1)行事用大型絵本『せんたくかあちゃん』(作・絵:さとう わきこ、福音館書店) 読み手・山内 (2)行事用大型絵本『おおきなかぶ』(著:トルストイ、訳:内田莉莎子、画:佐藤忠良、福音館書店)読み手・Kさん (3)iPadによるマルチメディアDAISY絵本『コッケモーモー』(作:ジュリエット・ダラス=コンテ、絵:アリソン・バートレット、訳:たなか あきこ、徳間書店)オペレーター・Oさん (4)もう一度、キーボード・歌付きで行事用大型絵本『おおきなかぶ』読み手・山内 当初は、黙って座っていることが難しく、職員に抱きかかえられている子どもが多かった。しかし、大型絵本の読み聞かせが始まると、四人の子どもは、集中して聞き始めた。そのあとマルチメディアDAISY絵本をiPadで見せたところ、大型絵本には全く関心を示さず、多動であった子どもが、タブレットの目の前まで近寄り、『コッケモーモー』にとても興味を示していた。スタッフの方も「もっと、歩き回ったりするような状態になるかと思っていたが、最後まで予想以上に静かに聞いていた」と感想を述べていた。 Kさんの感想:マルチメディアDAISY絵本は、プロジェクターとスピーカーを利用すると、同時に複数の人で楽しむことができて、より効果的だと思った。他にもパネルシアターや大型紙芝居なども楽しんでくれそうだと感じた。 そのあと15時45分ごろ、歩いて1分くらいの近くにある「墨田えがおの家」に移動。中学生たちが、それぞれゲームをしたり、テレビを見たり、宿題をしたりして過ごしていた。スタッフの方が施設の概要説明をして下さった。 Kさんの感想:こちらの施設に図書館員が訪問するとしたら、集合してもらってお話し会をするよりも、本やCD等それぞれの子どもの希望する資料を持っていき、また要望を聞いたりするマンツーマンに近い形のサービスが合っているような気がした。 職員の方からは、団体貸出でマルチメディアDAISYを借り、大型スクリーンで見たいとの申し出があった。 |
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