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山 内  薫

      キッズサポートりまへの3回目の訪問

 2017年8月9日の夏休みにキッズサポートりまへの3回目の訪問を行った。参加者は7名で、前回参加してくれた全身性障害の高校生の他、やはり墨東養護学校に通っている男子中学生、小学校高学年の子どもが3人、低学年の子どもが2人だった。(写真1)
写真1 お話し会の参加者
 図書館側は私とひきふね図書館の職員が3人、そして今回も筑波大学大学院のKさんが来てくださった。
 今回は午後2時からの1時間の予定で、前半がお話し会、後半は紙芝居やiPadを個々に見て貰うというプログラムにした。
 お話し会はじめの出し物は紙芝居の『おおきくおおきくおおきくなあれ』(まついのりこ/脚本・画 童心社)。この紙芝居は幼児向けの観客参加型の紙芝居で、表紙には小さい豚の絵が描かれており、子どもたちと一緒に「おおきくおおきくおおきくなあれ」と唱えて紙芝居をめくると次の場面に大きな豚が現れるという仕掛けで、次に出てくるのは小さな卵。またみんなで「おおきくおおきくおおきくなあれ」というと次の場面で卵が大きくなるが、卵にはひびが入っていて中から「ガオーン」という声が聞こえてくる。すると次の場面では卵が割れて中
から怪獣が出てくる。次は小さなケーキが画面の真ん中に描かれている。そこでまた、みんなで「おおきくおおきくおおきくなあれ」と唱えるのだが、次の場面のケーキは画面の半分ほどしかなく、これではみんなで食べられないといって、もう1度みんなで「おおきくおおきくおおきくなあれ」と言うと、画面一杯のケーキが現れるという8場面の紙芝居で図書館などでも子どもたちに好評である。図書館や高齢者施設でもこの紙芝居を何回も上演しているが、その場合もう1つ仕掛けを用意している。紙芝居の最後の場面は画面一杯のケーキだが、子どもたちにもう1度「おおきくおおきくおおきくなあれ」と唱えてみようと言うのである。そして黒い幕の後ろから段ボールで作った横1メートル、縦80センチほどの巨大ケーキを登場させる。これはインパクトがあってとて
写真2 紙芝居
おおきくおおきくおおきくなあれ

写真3 巨大ケーキの出現
も好評だが、図書館で上演するときのように巨大ケーキを隠しておくところが「りま」にはないので、苦肉の策で紙芝居の後ろに折りたたんだケーキを置きそこに暗幕を被せて隠し、最後に暗幕を取り除いて折りたたんだ巨大ケーキを出すことにした。(写真2、3)皆とても喜んでくれた。
 次はやはり写真による紙芝居『 フォトかみしばいかがくのアルバム アブラゼミ』(七尾純/構成・文 あかね書房)を行った。丁度夏でもあり季節にちなんだ紙芝居ということで見てもらった。(写真4)
 次は行事用大型絵本の『せんたくかあちゃん』(さとうわきこ/さく・え 福音館書店)(写真5、6)。洗濯が大好きなかあちゃんは、お天気の良い日には、家中の物、猫も、犬も子どもまで、みんなたらいに放り込み、ジャブジャブ洗う。その洗濯物を庭と向かいの森の木という木に縄を張り全部干す。それを見た雷が干されている子ども達や動物のおへそを食べようと、空から落ちてくる。その薄汚れた雷を見たかあちゃんは、雷をたらいに放り込み、ゴシゴシ洗ってしまう。そのために顔が消えてしまい、雷の顔をペンで書いたところ、皆、美男子になって空に帰って行った。その翌日、空が俄にかき曇り、おびただしい数の雷が顔を書いて欲しいと落ちてくる。かあちゃんは「まかしときい!」と胸を張る。というあらすじでこの本も子どもに読む本の定番となっている。
 続いて行事用大型絵本の『どうぶついろいろかくれんぼ』(いしかわ こうじ作 ポプラ社)。絵本のページに動物の輪郭の穴が空いており、ページをめくると輪郭の中に動物の顔や体が現れるという仕掛け絵本。子どもたちに動物の名前を当ててもらうことができる。
写真4 紙芝居アブラゼミ 写真5 大型絵本せんたくかあちゃん 写真6 せんたくかあちゃん、
     雷が大量に落ちてくる
 全員で見てもらうお話し会はここまでで、その後個々に見てもらうことにする。私は『美女と野獣』の紙芝居上・下(ボーモン著 藤田勝治構成/絵 童心社)を持って行った。丁度ディズニーの実写版『美女と野獣』が4月に封切られたばかりだったので、興味を持ってもらえると考えたのだがALSの高校生を含めて3人の子どもたちが見てくれた(写真7)。3人とも床に寝そべって上・下で20分近くかかる紙芝居を最後まで熱心に見てくれた。
 同じ時間、中学生の男子と高学年の女の子はiPadに収納されている伊藤忠財団が制作したわいわい文庫の中のマルチメディアDAISY図書を一緒に見ていた。2人ともペローの『長ぐつをはいたネコ(ペロー昔話)』(愛蔵版おはなしのろうそく3 東京子ども図書館 編訳 / 大社玲子 絵 東京子ども図書館)を熱心に見ていた。男子中学生は墨東養護学校で日頃からマルチメディアDAISY図書に触れており、最初に訪問した際に、やはり同じわいわい文庫の『ラプンツェル』を読んでいた子である。2人とも絵はほとんどない、およそ20分の作品を最後まで集中して読んでいた(写真8)。
大型絵本どうぶついろいろかくれんぼ 写真7 紙芝居美女と野獣
写真8 長ぐつをはいたネコを読む 絵本キャベツくんを読む

 別の場所では、車椅子に乗った子どもにりまの職員が『キャベツくん』(長 新太/文・絵 文研出版)を読んであげていた。
 およそ1時間余の訪問中ALSの高校生は何度かいすの上に腹ばいになったり、布団に仰臥したり体位を変えていた。
 『おおきくおおきくおおきくなあれ』などの観客参加型の作品や『どうぶついろいろかくれんぼ』のようなクイズ形式の作品を所々で挟むと、ずっと座って話を聞いているだけではなく、リラックスできるようなので、子どもたちとの応答ができる出し物をもう少し考える必要があると感じた。
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