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点字から識字までの距離(116) 通所支援事業所へのサービス(6) 山 内 薫 |
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ほわわ墨田でのお話し会 ほわわ墨田は児童発達支援サービスを行っている通所支援事業所で、医療ケアが必要な就学前の子どもたちを対象としている。ほわわ墨田を運営しているのは愛知県に本部のある「社会福祉法人むそう」で愛知県半田市の本部の他、全国に20カ所に事業所があり、活動を展開している。愛知県以外では東京に4カ所、宮城に2つの事業所があり、その特徴はライフステージに合わせた支援だという。法人のパンフレットには「誕生から看取りまで、生涯寄り添える存在でありたい」という見出しの元に「むそうが目指しているのは、たとえ家族がいなくなっても障害のある本人が、『自分らしい暮らしを、暮らしたい地域で継続できること』です。『育む』『働く』『住む』『経験する』この4つの基本的な支援を軸に、子どもの成長を支え、あたたかい〝人の垣根〟で包み込み、成人から老年期までの暮らしにずっと寄り添って行きたいと考えています。」と書かれている。ほわわ墨田のような児童発達支援事業の他に、余暇・社会参加支援を行う地域生活支援サービス、働くことを支援する日中活動系サービス、グループホームや1人暮らし支援と4つのサービスを行っている。児童発達支援を行っている事業所は愛知県の2カ所の他に、東京の墨田、世田谷、品川、大田にある。むそうの児童発達支援サービスはいずれも「医療ケアが必要な子どもたちの成長を支え、たくさんの人で包み込む」とあり「呼吸器が必要な子ども、気管切開や胃ろうなどの状態の子ども、さまざまな要因で医療対応が必要な子どもたちが、自宅で家族とだけ生活するのではなく、むそうのスタッフや友達と楽しくコミュニケーションを取りながら生活する場所です。小さな命をささえる家族とその子どもたちが、少しでも将来に生活に見通しをたて、安心して暮らせる社会をつくりたいと考えています。」と記されている。
(https://www.mhlw.go.jp/content/12601000/000794739.pdf) さて、このほわわ墨田から、お話し会の依頼があり、2019年1月30日午後1時過ぎに訪問することになった。急な依頼だったこともあり、ひきふね図書館の職員2人、児童館のお話し会や図書館のお話し会でパネルシアターやエプロンシアターなど多彩な出し物をして下さっている「つくしんぼう」というグループのSさん、そして私の4人で出かけていくことになった。事業所には5人の子どもたちがおり1人ひとりに職員がついて、職員の膝の上で皆おはなしを聞いてくれた。職員は看護師、作業療法士、理学療法士、児童指導員、保育師などの資格を持つ人とその補助の人などで、この日は7人の方がおられた。プログラムも急遽決めたが、やはり歌入りの出し物を中心として構成した。 最初は職員のKさんの手遊び歌「しあわせなら手をたたこう」。歌を歌いながらみんなに手をたたいてもらった。(写真1) 次にSさんがパネルシアターの「くいしんぼうなゴリラ」を行った。パネルシアターの中央にゴリラが貼り付けてあり、「くいしんぼうなゴリラが バナナをみつけた かわむいて かわむいて パクンとたべた ドンドコドンドン ドンドコドンドン おー うまい」(作詞 阿部直美、作曲 おざわたつゆき ただし歌詞についてはさまざまなバージョンが作られて、歌われている)という歌詞に合わせて、バナナの絵札を出して、皮をむいていく動作を繰り返し、絵を裏返すとむいたバナナになっていて、それをゴリラの口の中に入れる。次はレモンで「おーすっぱい」、ゴーヤで「おーにがい」、赤唐辛子で「おーからい」と続き、タマネギで「皮むいて、皮むいて、食べるところがなくなった、ドンドコドンドン ドンドコドンドン うぇーん、うぇーん」そして最後に「チョコレート」で再び「おーうまい」に戻っておしまい。(写真2、3) 引き続きSさんのパネルシアター「ぽんたくんの大変身」(『保育いきいきパネルシアター』 松家まきこ 大東出版社 所収)。頭の部分(顔と耳)と身体の部分(お腹と足)が同じ形の動物が描かれ、中央部分で折れるようになっており、それぞれが張り合わされていて、めくると違う動物になる仕掛けで、タヌキ、パンダ、ブタ、コアラと変身していき、最後にまたタヌキに戻る。「ぽんぽんぽんたくんの大変身、ズンチャズンチャズンチャズンチャ、ズンチャズンチャズンチャズンチャ、ぽんぽんぽんたくん、ぽんぽんぽんたくん、葉っぱをのせて、ルルルルルー、ポン、パンダさんになっちゃった」という歌に合わせて、頭の上に葉っぱをのせ、足の部分をめくるとパンダに変身する。(写真4、5) 2つのパネルシアター共に歌によって展開するので、子どもたちも楽しそうに見ていて、ぽんたくんの大変身では歌に合わせて手拍子を打ってくれた。(写真6) 次に私が絵本『ねばらねばなっとう』(林 木林著、たかお ゆうこ絵、わくわくユーモアえほん、ひかりのくに)を紙芝居化したものを行った。この絵本は替え歌の絵本で、元歌は「静かな湖畔」。「静かな湖畔の森のかげから もう起きちゃいかがと かっこうがなく カッコー カッコー カッコカッコカッコー」という元歌のカッコーの部分をナットーにかえて歌うもの。「しずかなご飯の粒のかげから、糸引き綱引きはじめよか ナットー、ナットー、ナットナットナットー」と、ナットーたちがテーブルの上で運動会を繰り広げるというもの。(写真7、8)途中、組み体操の部分だけはナットーがイットー(1等賞)になる。(写真9)図書館や児童館などでやるときには「ナットー、ナットー、ナットナットナットー」の部分を参加者にも一緒に唱和してもらうのだが、このテンポで声を出すのは難しい子どもたちなので、やはり、手をたたいてもらった。 次はペープサートで歌う「どんないろがすき」(坂田おさむ作曲)。赤、青、黄色、緑のクレヨンとそれぞれの色のリンゴ、長靴、レモン、葉っぱのペープサートを出しながら歌を歌った。(写真10) そして、行事用の大型絵本を使って『だるまさんの歯』(かがくいひろし・さく ブロンズ新社)を読んだ。(写真11) 続いて紙芝居の『おにぎりおにぎり』(長野 ヒデ子脚本・絵 童心社)を歌と振り付け入りで行った。(写真12、13)「おにぎりギュッギュッ、おにぎりギュッ、ウメボシ入れて、ギュッ、ギュッ、おにぎりギュッギュッ、おにぎりギュッ」という歌詞に曲を付け、「おにぎり(グーの両手で交互に空間をたたく)ギュッギュッ、(両手でおにぎりをにぎる動作)おにぎりギュッ(前の動作のくり返し)、ウメボシ入れて(左手の掌に右手のチョキで梅干しを入れる動作)ギュッギュッ(両手でおにぎりをにぎる動作)おにぎりギュッギュッ、おにぎりギュッギュッ(それぞれの動作のくり返し)」という振りを付けて一緒に歌と動作をやってもらう。このようにして梅干しの次はかつお節、塩ジャケなどを入れて、できたおにぎりを持って裏山でみんなで一緒に食べるというストーリー。子どもたちは介護の方に手を添えてもらいながらおにぎりをにぎる動作を一生懸命してくれた。 次は、みんなもよく知っている『はらぺこあおむし』(エリック・カール作 もりひさし訳 偕成社)の行事用大型絵本を読んだ。(写真14)絵本を読み終わった後、折り紙で作った大小のはらぺこあおむしをお土産においていった。(写真15) 最後は絵本『どっとこどうぶつえん』(中村至男著 福音館書店)でページごとに出てくる動物を当ててもらった。動物たちはドットで表されているにもかかわらず、ほとんどの動物を当ててくれた。(写真16、17) 医療ケアの必要な重度の障害児へのお話し会はキッズサポートりまで今までにも何度も行ってきたが、学齢前の子どもたちは初めてだったので、特に歌などを中心にプログラムを組み立てたが、少し欲張りすぎて長かったようで、お終いの方は少し疲れた様子が見えた。 歌や音楽を中心に実施したことは良かったと思うが、それぞれの出し物をもう少しゆっくり行えば良かったのではないかと反省している。図書館や児童館で実施するときとほとんど同じテンポで歌ったり読んだりしたが、それも子どもたちが疲れる要因になったのではないかと思う。
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