「うか」123 連載初回へ トップページへ | ||
わたくしごと 木村多恵子 |
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わたくしごと(いろいろ) 1.ローザ パークス 1955年12月1日、アラバマ州モンゴメリーでのこと、ローザ パークスは期せずして夫の反対を押し切って〈バスボイコット運動〉に参加した。同じ料金を払っても、白人は前の席、黒人は後ろの席と区別されており、たとえ前の席が空いていても、黒人は後ろまで行かなければならなかった。この人種差別にローザは抵抗した。普段は差別バスに乗るより歩く方を選んでいたが、その日、ローザは疲れ果てていて、バスに乗り席に着いた。と、「座席を譲れ」と言われ、ローザが「嫌です」と断ると、ローザは即座に逮捕されてしまった。 賛否両論が巻き起こり、ついに1956年クリスマスにバームス判事によって〈バス座席差別〉は、違法と判断された。が、現実にはその習慣はなかなか変わらなかった。地域にも差はあるだろうが、1990年頃でもその習慣は変わらなかったようである。 私の知人がアメリカから帰ってきて、「差別はいくらでもある」と、話してくれたのは2019年のことであるから、私には想像もつかない。 なお、ローザ パークスは2005年92歳で老衰で亡くなったと聞く。 2.〈アメリカ同時多発テロ〉 アメリカ ニューヨークの〈ワールドトレードセンター〉で起きた同時多発テロ事件は、2001年9月11日のことだった。 アメリカ議会は襲撃実行犯等に対して、ほぼ全員が〈有罪〉としたが、その議会の1人の女性下院バーバラ リーは反対(無罪)と言った。多くの人はそれを「なぜ?」と問うた。 ある記者がバーバラ リーに聞くと「子供の頃から、母になんでも全員一致はないと教えられていたから」と答えたと言う。 私も「全員一致の意見はありえない。」ということは聞かされていたので、そうか、そういうことか、と理解した。全員一致の意見はそっくりそのまま決定されたものの打ち消しになるのだと言う。 それにしてもバーバラ リーの勇気はすごい。 3.わたしはコップ わたしはコップ、小さなコップ、どこにでもある、ありふれたコップ。けれどもこの世にあるたった1つのコップ。なぜっていつの間にか薄汚れ、透明度を失い、傷だらけ。ヒビ割れもあり、おもてはおろか、中も底も裏底にもたくさんの傷がある。好き勝手なヒビ、それでもコップのわたしはわたしを愛おしみながら、疎みながら、大切にしてきた。世界にたった1つのヒビだらけのコップというわたし。やがてコップは微塵に壊れる。ヒビ割れから飛んだ破片は人を、誰かを傷つけただろう。どうか最後の破片がどなたをも傷つけませんように! 「ありがとう!」と一言囁いて、人に気づかれない石英になって静かに沈んで行きたい小さな器。 |
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